天竜寺船(読み)テンリュウジブネ

デジタル大辞泉 「天竜寺船」の意味・読み・例文・類語

てんりゅうじ‐ぶね【天竜寺船】

興国2=暦応4年(1341)足利直義あしかがただよし天竜寺造営費用を得るため、夢窓疎石らと元に派遣した貿易船。

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改訂新版 世界大百科事典 「天竜寺船」の意味・わかりやすい解説

天竜寺船 (てんりゅうじぶね)

南北朝時代,天竜寺造営のため室町幕府が元(げん)に派遣した貿易船。当時は造天竜寺宋船とよばれた。1339年(延元4・暦応2)8月に没した後醍醐天皇菩提をとむらうため,足利尊氏は天竜寺の造営を企て,同天皇に伝領されていた嵯峨野の離宮亀山殿(かめやまどの)を禅院に改め,夢窓疎石を開山とし,寺領として元弘恩賞地日向国国富荘を寄進した。造営には巨額の費用が必要なため,幕府内において宋船派遣が論議され,その是非をめぐって紛糾したが,疎石の懇願によって派遣が決定した。41年(興国2・暦応4)12月,足利直義(ただよし)は疎石に対して,明年秋に宋船2艘を渡航させるように告げた。疎石はまず1艘を渡航させることに決め,綱司(船長)として博多商人至本(しほん)を推挙し,直義もこれを許した。至本は商売の損益を論ぜず,帰朝時に現銭5000貫文を寺家に納めることを約し,42年(興国3・康永1)秋に船は元に渡航した。帰朝後の45年(興国6・貞和1)天竜寺は落慶し,8月29日盛大な供養が営まれた。
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百科事典マイペディア 「天竜寺船」の意味・わかりやすい解説

天竜寺船【てんりゅうじぶね】

足利尊氏天竜寺の造営費を獲得するため,1342年元(げん)に派遣した貿易船。船長を博多商人至本(しほん)に請け負わせ,帰朝後損得のいかんにかかわらず5000貫文を天竜寺に納めることを約束させ,その代償として幕府は航海の安全を保障した。
→関連項目夢窓疎石

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「天竜寺船」の解説

天竜寺船
てんりゅうじぶね

南北朝期に京都天竜寺の造営費をえるため,中国の元に派遣した室町幕府公許の貿易船。1342年(康永元・興国3)派遣。後醍醐天皇が没すると,足利尊氏は夢窓疎石(むそうそせき)の提案にしたがい,天皇の冥福を祈るために天竜寺造営を決めた。その造営費獲得の一環として元への貿易船派遣を企て,夢窓疎石の推挙をえて足利直義(ただよし)が,41年(暦応4・興国2)12月,有力商人至本(しほん)を綱司(ごうし)に命じた。至本は,帰国の日に現銭5000貫文を天竜寺造営費として納める請文を提出して出発。幕府は船の警固の責任を負担し,海賊などから貿易船を保護した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天竜寺船」の意味・わかりやすい解説

天竜寺船
てんりゅうじぶね

天竜寺造営の費用を調達するため元(げん)に派遣された船。1341年(興国2・暦応4)12月、足利直義(あしかがただよし)は京都・天竜寺の夢窓疎石(むそうそせき)に対し、二隻の貿易船の派遣を免許し、翌年の秋に出航できるよう準備を進めさせた。直義はそのうちまず一隻を渡航させることにし、疎石は博多(はかた)商人至本を綱司に推挙した。至本は貿易の利益のいかんにかかわらず、帰国後に5000貫文を寺に納めることを約束した。他方幕府はこの船を当時瀬戸内海地方に横行していた海賊などから保護する責任を負った。

[池上裕子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天竜寺船」の意味・わかりやすい解説

天竜寺船
てんりゅうじぶね

興国3=康永1 (1342) 年京都天竜寺造営の資を得るため中国,元に派遣した室町幕府公許の貿易船。興国2=暦応4 (41) 年足利直義が天竜寺開山夢窓疎石に許可し,帰国ののち損益にかかわらず銭 5000貫文を寺に納めることとし,その代償として幕府は海賊の難を防ぐ責任があった。博多の商人至本 (しほん) が綱司となって1隻を送ったが,帰国事情は不明。

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旺文社日本史事典 三訂版 「天竜寺船」の解説

天竜寺船
てんりゅうじぶね

室町前期,足利尊氏が天竜寺造営費を調達するため,元に派遣した貿易船
発令者は足利直義。1342年,博多の商人至本 (しほん) に,海上保護などを保証し,帰国後銭5000貫を納めることを約束させ派遣した。

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