奪う(読み)ウバウ

デジタル大辞泉 「奪う」の意味・読み・例文・類語

うば・う〔うばふ〕【奪う】

[動ワ五(ハ四)]
他人の所有するものを無理に取り上げる。「金品を―・う」「自由を―・う」「地位を―・う」
取り去る。取り除く。「命を―・う」「地表の熱を―・う」「雪で通勤の足が―・われる」
注意・関心などを強く引きつける。夢中にさせる。「観客の目を―・う華麗な演技」「あまりの美しさに心を―・われる」
競技などで得点する。また、獲得する。「三振を―・う」「タイトルを―・う」
[可能]うばえる
[類語](1取る取り上げる分捕ぶんどかすめ取るもぎ取る引ったくるぶったくるふんだくるさらっ攫う横取りする強奪する奪取する略取する略奪する収奪する簒奪さんだつする剝奪はくだつする吸い取る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「奪う」の意味・読み・例文・類語

うば・ううばふ【奪・褫】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙 ( 平安時代には「むばふ」とも表記された )
  2. 他人の所有物を無理やりに取り上げる。奪いとる。
    1. (イ) 力ずくで人の物を自分の物にする。強奪する。よこどりする。
      1. [初出の実例]「謂(をも)ふに当に国を奪(ウハハ)むとする志有りてか」(出典:日本書紀(720)神代上(水戸本訓))
      2. 「ばくち、京わらはべ、くるまむばひたり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
    2. (ロ) 権力によって、地位、仕事、財産などを取り上げる。剥奪(はくだつ)する。没収する。
      1. [初出の実例]「道隆公に悪まれて罪も無きに官祿を褫はれ困辱を極めたりしに」(出典:小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉五)
    3. (ハ) 君主を除き、代わってその地位につく。簒奪(さんだつ)する。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
      1. [初出の実例]「大王の宣位を簒(ムハヒ)(ムハ)はんとするなり」(出典:守護国界主陀羅尼経平安中期点(1000頃)一〇)
    4. (ニ) ひそかに自分の物にする。盗みとる。かすめとる。
      1. [初出の実例]「我を思ひへだてて、吾子(あこ)の御けさう人をうばはむとし給ひける。おほけなく心をさなきこと」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
    5. (ホ) そうでないものが本来のもののように見えたり、本来のものを乱したりする。
      1. [初出の実例]「雪の色を有婆比(ウバヒ)て咲ける梅の花今盛りなり見む人もがも」(出典:万葉集(8C後)五・八五〇)
    6. (ヘ) ( 男女関係で ) 肉体をおかす。
      1. [初出の実例]「今迄自分を奪ったものは甲谷だとばかり思ってゐたのに」(出典:上海(1928‐31)〈横光利一〉五)
  3. ( 「志を奪う」などの形で ) 人の気持などを無理に変えさせる。
    1. [初出の実例]「我は兄王(いろねのきみ)の志を奪(うばふ)可からざることを知れり」(出典:日本書紀(720)仁徳即位前)
  4. 取ってなくす。取り去る。
    1. [初出の実例]「彼に苦しみをあたへ、命をうばはん事、いかでかいたましからざらん」(出典:徒然草(1331頃)一二八)
  5. 心や目を引き付ける。ふつうは、受身の助動詞を伴って用いられる。
    1. [初出の実例]「世にしたがへば、心、外の塵にうばはれてまどひやすく」(出典:徒然草(1331頃)七五)
    2. 「長途のくるしみ、身心つかれ、且は風景に魂うばはれ」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)須賀川)

奪うの補助注記

「文明本節用集」に「奪 バウ ウバウ」と併記されているように、中古から近世にかけて「ばふ」という語形もあった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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