取上げる(読み)トリアゲル

デジタル大辞泉 「取上げる」の意味・読み・例文・類語

とり‐あ・げる【取(り)上げる】

[動ガ下一][文]とりあ・ぐ[ガ下二]
置かれているものを手に取って持ち上げる。手に取る。「受話器を―・げる」
申し出や意見を受け入れる。採用する。「緊急動議を―・げる」
相手のもっているものを無理に奪う。
財産地位などを奪い取る。没収する。「田畑を―・げる」「免許を―・げる」
㋑相手の持ち物を一方的に奪う。おさえ取る。「賊の凶器を―・げる」
税金などを取り立てる。徴収する。「会費の滞納分を―・げる」
産婦を助けて子を産ませる。「産院で―・げてもらう」
問題として扱う。「訴えを―・げる」
髪を結いあげる。
「内儀さんの背後へまわって髪を―・げてやったりした」〈秋声あらくれ
[類語](2採択採用雇用雇う雇い入れる抱える召し抱える召し使う取る/(3奪う吸い取る剝奪収奪せしめる取る分捕ぶんどかすめ取るもぎ取る引ったくるぶったくるふんだくるさらっ攫う横取りする強奪する奪取する略取する略奪する簒奪さんだつする

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精選版 日本国語大辞典 「取上げる」の意味・読み・例文・類語

とり‐あ・げる【取上】

  1. 〘 他動詞 ガ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]とりあ・ぐ 〘 他動詞 ガ下二段活用 〙
  2. 下にあるものを手に取って持つ。拾いあげる。
    1. [初出の実例]「針袋等利安宜(トリアゲ)前に置きかへさへばおのともおのや裏も継ぎたり」(出典:万葉集(8C後)一八・四一二九)
  3. 財産などを没収する。また、法規に基づいたり、戦時の特別措置によったりして、金銭物資などを強制的に出させる。
    1. [初出の実例]「ヤク、または、チギャウヲ toriaguru(トリアグル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  4. 取って自分のものにしてしまう。だましたり、腕にかけたりして奪い取る。ふんだくる。
    1. [初出の実例]「紙入の類みな取(トリ)あげられて手になし」(出典:滑稽本浮世床(1813‐23)二)
  5. 特に数えたてる。また、とりたてて問題にする。
    1. [初出の実例]「取(トリ)あげて沙汰すべきやうなく」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)一)
    2. 「彼様な奴の云ふ事を取上げるも大人気ないと思って」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
  6. 身分などを引き上げる。上位につける。
    1. [初出の実例]「其身を過分に取あげし安祿山など」(出典:浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)三)
  7. 意見、申し出などを採用する。申し出たことを受理する。
    1. [初出の実例]「将又(はたまた)効能をいふたればとて、座長もヲイソレとは取(トリ)あげざる也」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙緒言)
  8. 産婦を介抱して子を分娩させる。また、育てる。
    1. [初出の実例]「君をば乳のうちより、それがしこそ取あげ奉ては候へ」(出典:曾我物語(南北朝頃)九)
  9. 髪をたぐりあげて結ぶ。また、髪を結い上げる。
    1. [初出の実例]「かぶとをばぬいでたかひもにかけ、みだしたるかみとりあげ」(出典:義経記(室町中か)五)
  10. 髪上げを行なう。元服させる。
    1. [初出の実例]「生年九と申し時、君の御元服候し夜、かしらをとりあげられまいらせて」(出典:平家物語(13C前)一〇)

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