六訂版 家庭医学大全科 「好酸球肺浸潤症候群」の解説
好酸球肺浸潤症候群
こうさんきゅうはいしんじゅんしょうこうぐん
Pulmonary infiltration with eosinophilia
(呼吸器の病気)
どんな病気か
好酸球肺浸潤症候群とは、好酸球が肺に浸潤する肺炎のことで、いくつかの疾患を総称したものです。好酸球とは、血液のなかの炎症細胞(白血球)のひとつで、アレルギーや寄生虫感染の時に重要なはたらきをする細胞です。好酸球肺浸潤症候群では末梢血液中に好酸球が増える場合がしばしばみられますが、必ずしも合併するとはかぎりません。
原因は何か
原因がわかっているものには、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(アレルギー性
原因不明のものとしては、レフレル症候群、急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎、アレルギー性肉芽腫性(にくげしゅせい)血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)、好酸球増加症候群があります。
症状の現れ方
症状は肺炎の重症度によります。重症では呼吸困難や
アレルギー性肉芽腫性血管炎は、喘息で発症する特徴がありますが、その後、好酸球性肺炎を起こすこともあり、皮膚、消化管、末梢神経、心臓、腎臓など重要な臓器も障害される全身性の血管炎です。喘息の治療が成功しているにもかかわらず、手や足がしびれたり、皮膚炎、腹痛や胸痛が現れてきた場合には、この疾患の可能性があります。
好酸球増加症候群では、末梢血のなかの好酸球が6カ月以上、1500/μℓ以上に増えて、多くの臓器障害が起こり、とくに心臓の障害が重い合併症となってきます。
検査と診断
検査では、胸部X線写真で肺炎像が確認されます。肺炎像に加えて、血液検査で好酸球の増多があれば好酸球肺浸潤症候群が考えられ、
原因が予測できる疾患では、その原因物質を特定することで診断が可能になってきます。アレルギー性気管支肺真菌症は、喀痰のなかから真菌を確認し、血液検査でその真菌に対する免疫グロブリン(IgGおよびIgE)を確認します。また、
また、アレルギー性肉芽腫性血管炎では、血液検査でIgEの上昇とPANCAの上昇が重要な診断の根拠になります。
治療の方法
軽症例では無治療で改善することもありますが、一般的にはステロイド薬(副腎皮質ホルモン)を内服することにより早期に改善します。しかし、アレルギー性肉芽腫性血管炎、慢性好酸球性肺炎、好酸球増加症候群ではステロイド薬に十分な反応が得られないこともあります。その場合は、抗がん薬のシクロフォスファミド(エンドキサン)やヒドロキシカルバミド(ハイドレア)などを併用することもあります。
また、遺伝子の異型例ではイマチニブが著しく有効な症例があります。
病気に気づいたらどうする
好酸球肺浸潤症候群は、集団健診の胸部X線検査で異常を指摘されるか、咳、呼吸困難、発熱、全身
いずれにしても早期発見・早期治療が重要なので、これらの疾患が疑われたら病院を受診してください。
興梠 博次
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報