高見順の長編小説。1939年(昭和14)1月より1940年3月まで『文芸』に連載された。1940年4月新潮社刊。小説家である「私」は浅草にアパートを借り、近くのお好み焼き屋惚太郎(ほれたろう)に出入りするうちに、レビューの踊り子小柳雅子(まさこ)に心ひかれるようになる。しかし彼女には浅草芸人の恋人がいることがわかり、やるせなさをかみしめねばならなかった。踊り子への慕情をくどくどとつづる饒舌(じょうぜつ)体の文体は、三雲祥之助(しょうのすけ)の挿絵とともに浅草情緒を醸し出すのに効果をあげ、「浅草を背景にして心の風景を書かう」とした作者の意図はみごとに成功している。
[遠矢龍之介]
『『如何なる星の下に』(新潮文庫)』
…当時,彼は〈描写のうしろに寝てゐられない〉と独自の饒舌体を主張した。ファシズムにむかう時代の流れに抗し《人民文庫》の同人として散文精神を固守しようとしたが,《如何なる星の下に》(1939‐40)では浅草の風俗を描く方に傾いた。戦後は,私生児という自己の出生の秘密にくい込んだ《わが胸の底のここには》でスタート。…
※「如何なる星の下に」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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