妙法寺記(読み)みようほうじき

日本歴史地名大系 「妙法寺記」の解説

妙法寺記
みようほうじき

二冊

別称 文正永禄間記・妙法寺記録・妙法寺年録

版本 無窮会図書館(文政九年版)

解説勝山記」と祖本を同じくする。「勝山記」同様に表題はなかったが、文化一五年書写の小山田与清所蔵本を文政九年版刻するに際し、「妙法寺記」と命名された。同名称で「続群書類従」に収録されたこともあって、「妙法寺記」の名が通用しているが、「勝山記」のほうが原形に近いとする説が有力である。文政九年版には文正元年―永禄四年が収載され、続群書類従本にはそれに暦応元年―寛正六年が付加されている。なお本書が漢文形態を主体とするのに対し、「勝山記」はカナ混じり文を多用する。内容的にはほぼ同じだが、表記以外に異なる点もあるので、利用にあたっては両者の比較・検討が必要である。

活字本 続群書類従三〇上・「富士吉田市史資料叢書」一〇・「都留市史」資料編古代・中世・近世一


妙法寺記
みようほうじき

一冊

別称 勝山記・常在寺衆中記など

成立 慶長年間

写本 山梨県富士御室浅間神社

解説 私年号である師安五年から永禄二年までの年代記甲斐駿河などの領主戦乱の動き、自然災害・飢饉・経済状況など興味深い内容が多い。著者は富士御室浅間神社支配下の浄蓮寺住僧という説と、妙法寺(現山梨県河口湖町)住僧という説があったが、浅間神社に隣接する常在寺で本書のもととなったとみられる日国覚書が発見され、「常在寺衆中記」とすべきとの見解が強い。

活字本 「富士吉田市史資料叢書」一〇・「静岡県史」資料編七(抄録)


妙法寺記
みようほうじき

二巻

別称 甲斐国妙法寺記・妙法寺旧記

写本 国会図書館・国立公文書館ほか

解説 山梨県南都留郡の日蓮宗妙法寺の文正元年より永禄四年に至る九六年間の記録。記述は簡略であるが、気候・豊凶・物価・疫病・世相や、北条氏・武田氏などの戦国大名や土豪の動静を記す。とくに米・麦などの物価の記事や、武田信玄を批判する点などが注目される。

活字本 続群書類従三〇上・新編信濃史料叢書八・甲斐志料集成七など

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「妙法寺記」の意味・わかりやすい解説

妙法寺記
みょうほうじき

『勝山記(かつやまき)』ともいう。駿河(するが)国駿東(すんとう)郡岡宮(おかのみや)光長寺(静岡県沼津市)を本寺とする甲斐(かい)国(山梨県)都留(つる)郡の河口湖の南岸、小立(こだち)・勝山あたりに居住する法華(ほっけ)宗僧侶(そうりょ)によって書き継がれた年録。1466年(文正1)~1563年(永禄6)に至る記録で、冒頭に1338年(延元3・暦応1)からの、ごく簡単な記事を付載。富士北麓(ほくろく)の法華宗の状況、富士参詣(さんけい)にかかわる道者、御師(おし)、神社、各村の様相、用水をめぐる農民と武士の対立、富士北麓の支配者小山田(おやまだ)氏の位置、富士山の自然現象、交通、近隣の北条氏・今川氏・武田氏の活動などが記される。1561年までは『続群書類従』『続史籍集覧』に所収。

[矢田俊文]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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