《法華経》をよりどころとする宗派。《法華経》は,インドの比丘(びく)(僧)の教団とは別に,在家信者の菩薩団の運動のなかで北西インドに成立,釈尊は歴史を超えた永遠の昔からの存在であるとし,その教えを譬喩(たとえ)や象徴によって説いた。インドでは竜樹が《大智度論》に引用し,世親はこの注釈書《妙法蓮華経優婆提舎(うばだいしや)》を著している。中国では6種の漢訳ができたが,クマーラジーバ(鳩摩羅什)の《妙法蓮華経》が最も流布した。注釈も多く行われ,とりわけ法雲の《法華経義記》はその最高とされる。この経を根本としたのが天台宗で,天台大師智顗(ちぎ)により一宗となり,独特の経の位置づけをした。智顗の三大部(《法華玄義》《法華文句》《摩訶止観(まかしかん)》)はその体系を示している。のち法相(ほつそう)・華厳・密教の勢力におされたが,湛然(たんねん)はこれを中興した。日本では,聖徳太子がすでに《法華義疏》を著したが,中国天台宗の教学書を日本に伝えたのが鑑真で,これをうけて日本天台法華宗を始めたのが最澄である。日本天台宗は天台・禅・律・密教の4宗を含み,のちに浄土教も展開させた。《法華経》への信仰は,こうした宗派に収れんされただけでなく,広く流布している。とりわけ同経に説く悪人成仏・女人(によにん)成仏の教えがうけいれられた。《法華経》の書写・出版,講経,埋経も行われ,強烈な法華信仰をもつ持経者もあらわれ,文芸・美術にも深く影響を与えた。鎌倉時代の日蓮は,天台宗の密教化を否定,釈尊-智顗-最澄-日蓮の思想的系譜を描き,法華宗=法華仏教の正統を継承する者として自己規定したばかりでなく,釈尊にみずからを直結させる宗教的系譜を描いた。日蓮以後,中世において日蓮法華宗が展開していった。近世末期幕末から明治維新期には《法華経》をよりどころとする在家仏教運動が展開した。こうした法華仏教は,密教・禅仏教・浄土教とともに,現代の日本仏教を構成している4本柱の一つといってよい。
→天台宗 →日蓮宗
執筆者:高木 豊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
広義には「法華経」をよりどころとする教団の総称。日蓮みずからは自説を法華宗とはよばず,「予が一門」と称したが,門弟らは法華宗と称し,1876年(明治9)日薩が日蓮宗の公称許可を得るまで続いた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…京都市中京区にある法華宗(本門流)の本山。妙顕寺から分かれた日隆が1415年(応永22)油小路高辻と五条坊門の間(現,下京区)に開創,29年(永享1)内野(うちの)に再建。…
※「法華宗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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