子宮外妊娠(読み)シキュウガイニンシン(その他表記)Extra Uterine Pregnancy

デジタル大辞泉 「子宮外妊娠」の意味・読み・例文・類語

しきゅうがい‐にんしん〔シキユウグワイ‐〕【子宮外妊娠】

受精卵子宮腔以外の、卵管卵巣腹膜などに着床し発育すること。

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精選版 日本国語大辞典 「子宮外妊娠」の意味・読み・例文・類語

しきゅうがい‐にんしん‥グヮイ‥【子宮外妊娠】

  1. 〘 名詞 〙 受精卵が子宮腔以外の部位に着床・発育すること。卵管・卵巣・腹膜・子宮頸管の四種の妊娠があるが、受精卵が卵管通過中に卵管の内側に着床して発育をはじめる卵管妊娠がもっとも多い。卵管破裂または卵管流産を起こし、胎児は助からない。

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家庭医学館 「子宮外妊娠」の解説

しきゅうがいにんしん【子宮外妊娠 Extra Uterine Pregnancy】

◎受精卵が子宮以外の部位に着床
[どんな病気か]
 正常妊娠では、子宮のなかで胎芽(たいが)(胎児の初期の状態)・胎児が育ちます。
 ところが、妊娠はしていても、子宮の中の正常な部位以外で胎芽・胎児が大きくなる場合があり、これを子宮外妊娠といいます。もっとも頻度の多い子宮外妊娠は、卵管(らんかん)という細い管の中で胎芽が大きくなり、通常、妊娠5週~8週くらいの間に、卵管破裂や卵管流産などをおこし、手術が必要となることの多い病気です。
[症状]
 超音波などの検査技術の進歩した今日では、無症状のうちに診断がつき、手術となる場合も少なくありません。しかし、一般的には、左右のどちらかの下腹部痛や、暗赤色の少量の性器出血があり、さらに、腹腔内(ふくくうない)に出血すると急な腹痛、吐(は)き気(け)や嘔吐(おうと)などの症状をおこします。ひとたび腹腔内に出血し始めると、場合によっては多量(2000mℓ以上)となり、生命の危険もあり得るので、大至急病院へ行かなければなりません。
[原因]
 骨盤内(こつばんない)感染といって、卵管付近に炎症がある場合や、以前の感染がもとで、受精した卵(らん)が正常に子宮の中に運ばれないためにおこることが多いとされています。
●受診する科
 妊娠の可能性のある女性の下腹部痛は、まず産婦人科を受診するとよいでしょう。生理がたとえ順調であっても、子宮外妊娠による性器出血のこともありますので、注意が必要です。
[検査と診断]
 妊娠検査薬は、通常、妊娠4~5週でほぼ100%陽性に出ます。この時点で超音波検査をしても胎嚢(たいのう)が子宮内に確認できるとはかぎりませんが、基礎体温表や絨毛性(じゅうもうせい)ホルモン値(hCG値)からみて、妊娠6週をすぎても子宮内に胎嚢が確認できないときは子宮外妊娠を疑います。
 ただし、この時点では、ごく初期の流産との鑑別がたいせつです。子宮の中に胎嚢が現われず、卵管やほかの部位に胎嚢が確認された場合には、無症状であっても、子宮外妊娠の疑いが強いと考えられます。
 妊娠週数がほぼ確実に6週以上となり、経腟的(けいちつてき)(腟から行なう)超音波検査などで子宮の中に胎嚢が現われない場合、子宮内膜掻爬(しきゅうないまくそうは)という検査をすることがあります。これにより子宮内での妊娠かどうかを直接診断できます。
 その他の検査でたいせつなものは、継続的に尿中の絨毛性ホルモン値をはかることや、MRIなどによる画像診断です。また、診断と治療をかねて、腹腔鏡(ふくくうきょう)による検査で、直接に卵管などをみることもあります。
 腹痛のある状態では、腹腔内出血の有無や、その量が重要な問題となります。ダグラス窩(か)という子宮と直腸の間にあるくぼみに、血液がたまっているかどうかを、腟から針を刺して調べます。出血が多量で、腹部も膨満(ぼうまん)し、全身状態が不良である場合には、血液検査も同時に行ないます。
 かつては、腹痛や腹腔内出血がおこってからしか診断のつきにくかった子宮外妊娠も、現在では、無症状のうちに手術などの治療を行なうことも可能になってきました。しかし、残念なことに、いまだに初期の流産と子宮外妊娠を、完全に区別するのがむずかしい場合もあります。子宮外妊娠の可能性がある場合には、妊娠のごく初期からの検査や注意がたいせつです。
◎子宮外妊娠部位を手術で除去
[治療]
 子宮外妊娠の診断がついたならば、基本的な治療は、手術により卵管などの子宮外妊娠部位を摘出することです。腹腔内に出血が多く、全身状態も不良であれば、輸血・輸液が必要となることも少なくありません。
 ごく初期の子宮外妊娠で、出血などもない場合には、腹腔鏡を用いて卵管を摘出する手術が可能であることがあります。また、特殊な状況では、抗がん剤を用いた治療や、卵管形成術などの卵管を残す治療も行なわれます。
 図「子宮外妊娠の着床部位とその頻度」のように、卵管という器官は左右2つあり、基本的に片方の卵管、卵巣が正常であれば、妊娠は可能です。
 それぞれの治療の副作用などを相談のうえ、選択可能な状態であるならば、担当医と治療法を話し合ってください。

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改訂新版 世界大百科事典 「子宮外妊娠」の意味・わかりやすい解説

子宮外妊娠 (しきゅうがいにんしん)
ectopic pregnancy

受精卵が卵管,卵巣,腹膜など,子宮腔以外の部位に着床して発育すること。全妊娠の0.3~0.7%にみられ,着床する部位によって,卵管妊娠,間質部妊娠,腹膜妊娠,卵巣妊娠などに分類される。卵管妊娠はさらに膨大部妊娠,卵管狭部妊娠に分けられ,膨大部妊娠の頻度が最も高く,次いで卵管狭部,間質部,腹膜,卵巣の順となる。

子宮外妊娠のうち,最も多い卵管妊娠を中心に原因となりたちについて解説する。ふつう,受精は卵管の膨大部で起こり,受精卵は移送されて,子宮腔に着床する。しかし受精卵の発育が異常に早い場合や,子宮内膜炎卵管炎骨盤腹膜炎あるいは虫垂炎などによって,卵管に炎症や瘢痕(はんこん),狭窄があって,卵管上皮の繊毛運動や卵管壁の蠕動(ぜんどう)運動に障害があると,受精卵の移送が円滑にいかず,受精卵は卵管内に止まってしまう。すると,受精卵の栄養胚葉から分泌されるタンパク質分解酵素の作用で卵管粘膜上皮が破壊され,受精卵が粘膜下組織に入り,着床する。これが卵管妊娠である。受精卵が発育してしだいに大きくなると,限られたスペースしかない卵管は伸展できず,妊娠3ヵ月ごろまでには,卵管腹腔口から胚芽が腹腔内に排出されるか,受精卵の侵食力が強いと卵管壁が穿孔(せんこう)したり破裂して,妊娠は中絶する。前者を卵管流産といい,子宮外妊娠中,最も頻度が高い。後者は卵管破裂という。いずれも大量の腹腔内出血と腹痛を伴う。腹膜に受精卵が着床したり,卵管流産から引きつづいて腹腔内に着床すると腹腔妊娠となる。この場合は,胎児が生存,発育して妊娠後半期までに至る場合がまれにある。

まず一定期間の無月経の後,不正子宮出血が起こる。出血量は少なく,出血とともに下腹部にさし込むような疝痛を伴う。胃部の痛みや嘔吐があることもあって,虫垂炎とまぎらわしいこともある。卵管破裂の場合は疼痛は激しい。急性腹症の代表的なものの一つとなっている。外出血は一般に少ないが,腹腔内の出血はしばしば大量で,顔面蒼白,手足冷感,体温下降などの症状となり,脈拍は弱く頻脈となり,血圧が下がって,ついには意識もうろうとなる(ショック状態)。腹部は初め,腹膜への刺激によって筋性防御を示し,かたくなる。卵管流産の場合は,一般に症状はゆるやかに現れることが多い。

典型的な症状を示している場合,診断は容易である。しかしそれ以外では,婦人科的双合診や妊娠反応(尿中hCG定性試験),超音波断層法,子宮卵管造影,あるいは腹腔鏡やクルドスコピーなどで検査し診断する。治療法は,開腹手術で患部を摘出し,止血をする。ショック状態にあるときは,輸血,輸液などによって全身状態を改善してから手術を行う。
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六訂版 家庭医学大全科 「子宮外妊娠」の解説

子宮外妊娠
しきゅうがいにんしん
Ectopic pregnancy
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 受精卵は子宮内腔の粘膜に着床するのが正常ですが、それ以外の場所に着床し妊娠が成立したものを異所性(いしょせい)妊娠といい、一般には子宮外妊娠という病名で知られています。およそ200~500回の妊娠に1回みられます。ほとんどは卵管(らんかん)内に妊娠したものです。まれには卵管の付け根、子宮頸管(けいかん)など、子宮のなかではあるけれども正常ではない部位や、卵巣、腹膜表面に妊娠します。

原因は何か

 卵管内に炎症が起こって卵管の通過が悪くなったり、受精卵を子宮内に運ぶ機能が低下すると、受精卵が卵管内にとどまって卵管妊娠になると考えられます。しかし、これらの機能障害に気づくことは難しく、原因がはっきりしないこともよくあります。

症状の現れ方

 子宮内の正しい部位でなければ順調に胎児が発育する環境ではなく、その場所で流産になったり、卵管が破裂したりして、出血が腹腔内にたまってくるため、下腹部痛が起こります。

 少量の性器出血が持続することが多く、腹腔内出血の量と速さにより、程度の異なる下腹部痛が起こります。ほとんど痛みがなかったり、突然強い痛みが起こったりすることがあります。

検査と診断

 尿の妊娠反応が陽性にもかかわらず、超音波検査では子宮内に妊娠の部位が見つからない場合に、子宮外妊娠が疑われます。

 正常妊娠のごく初期や、ごく初期の子宮内の流産も同じようにみえるので、慎重な判断が必要です。

 子宮内を掻爬(そうは)して、妊娠組織が顕微鏡的に見つかるかどうかを調べることもあります。症状が非常に軽いことも多く、症状が軽いほど診断に時間を要します。腹腔鏡で確認する場合もあります。

治療の方法

 腹腔鏡または開腹手術により、妊娠部位を見つけます。卵管ごと切除する方法と、妊娠組織を除去して止血し、そのまま卵管を残す方法があります。卵管を取れば、そちら側の卵管では妊娠できなくなります。残した卵管でも、再び子宮外妊娠が起こることがあります。

病気に気づいたらどうする

 急激な強い下腹部痛が起こったら、すぐに受診してください。ただし、妊娠のごく初期や排卵が遅れた場合、正常妊娠であっても子宮外妊娠が疑われることはしばしばあります。疑いが強い場合は、入院して経過をみます。

坂井 昌人

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「子宮外妊娠」の意味・わかりやすい解説

子宮外妊娠
しきゅうがいにんしん

受精卵が子宮体部以外の場所に着床して発育する場合をいう。全妊娠の約0.7%におこり、そのうち大部分(98%)は卵管妊娠であるが、まれに卵巣・腹膜・子宮頸管(けいかん)妊娠もみられる。

 卵管妊娠もいろいろな部位に分けられ、頻度は膨大部がもっとも多くて約70%、峡部は約20%、間質部が約5%、その他が約5%である。原因は卵管の炎症による癒着や狭窄(きょうさく)など、卵管の通過性が悪いときにおこる。したがって虫垂炎や結核性腹膜炎の影響で卵管の通過が悪くなったり、人工妊娠中絶(掻爬(そうは)手術)後に細菌感染して卵管炎をおこしたりすると、原因になることがある。卵管妊娠患者が治療を受けるのは、ほとんど全部が妊娠中絶、すなわち卵管破裂または卵管流産をおこしてからで、全例が腹腔(ふくくう)内出血を伴っていて胎児は助けられない。普通2~3か月無月経が続き、正常妊娠と同様につわりなどもあって妊娠と考えられるような時期にみられるが、予定月経前におこることもある。症状は、卵管破裂では突然下腹部の激痛をおこし、出血と疼痛(とうつう)が強い場合は顔面蒼白(そうはく)、脈が細く頻数になるほか、生あくびや冷や汗が出て呼吸も苦しく、いわゆるショック症状がみられる。卵管流産では陣痛様の下腹痛をおこし、その前後に暗赤色の出血が少量ながら長く続く。なお、卵巣・腹膜妊娠では中期、まれには末期まで妊娠が継続することがある。

 子宮外妊娠は、時がたてばかならず流産または破裂をおこすので、卵管妊娠になりやすい人、すなわち、結核性疾患、卵管炎、虫垂炎、腹膜炎にかかったことのある人、人工妊娠中絶後の経過が悪かった人、長期間にわたって不妊症であった人、卵管の通気治療や手術など不妊症の治療を受けた人は、妊娠の初期から医師の診察を受け、子宮外妊娠と診断されたらただちに手術をする。普通は腹式に摘除する。なお、診断には病歴や既往歴が参考になるが、ときに卵巣出血、虫垂炎、流産などと紛らわしく、内視鏡検査や入院して経過を観察することもある。重症例では発作後15時間以内に適切な処置をとらないと、大多数は生命に対して危険状態に陥る。

 また、子宮外妊娠の反復は10%以下であるが、再度の妊娠を希望しない場合は永久不妊手術も同時に行われる。

[新井正夫]


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百科事典マイペディア 「子宮外妊娠」の意味・わかりやすい解説

子宮外妊娠【しきゅうがいにんしん】

受精卵が子宮腔以外の部位に着床し発育する場合をいう。ほとんどが卵管妊娠で,まれに卵巣妊娠,腹膜妊娠がある。卵管妊娠の原因は,卵管炎などで受精卵の通路(卵管腔)が狭くなっている場合,周囲臓器の炎症などによる癒着(ゆちゃく)・圧迫などにより卵管が異常に曲折している場合,または卵管の蠕動(ぜんどう)異常などで受精卵の子宮腔到達に障害がある場合などがあげられる。妊娠1〜3ヵ月ごろ卵管流産または卵管破裂を起こし内出血する。胎児は大部分死亡吸収されるが卵管流産の場合,腹膜に転移発育することがある。卵管流産は下腹痛と出血が長く続き,卵管破裂は激痛と急速多量の内出血があり,失神昏倒(こんとう)し,死亡することもある。治療は開腹手術による。
→関連項目人工流産

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「子宮外妊娠」の意味・わかりやすい解説

子宮外妊娠
しきゅうがいにんしん
ectopic pregnancy

略して外妊ともいう。受精卵が子宮腔内以外の場所に着床した妊娠。卵管粘膜に着床する卵管妊娠が最も多いが,卵巣に着床する卵巣妊娠や,腹腔内に着床する腹腔妊娠もまれにある。卵管妊娠は,慢性卵管炎の既往歴をもつような卵管の通過障害が誘因となることが多い。卵巣妊娠や腹腔妊娠はかなり持続することがあるが,卵管妊娠では,大部分が妊娠3ヵ月頃までに卵管が破裂したり,卵管流産を起す。この場合,腹腔内出血によって腹膜刺激症状を示すことが多い。一般に子宮外妊娠の診断は,大量の子宮出血や腹腔内出血でショック症状を示すものは容易であるが,非典型的なものは困難な場合が多い。治療は開腹して患側の卵管摘出を行う。

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妊娠・子育て用語辞典 「子宮外妊娠」の解説

しきゅうがいにんしん【子宮外妊娠】

子宮の中に着床するはずの受精卵が、別の場所に着床してしまうトラブルです。最も多いのは卵管の中に着床してしまうケース。サインは妊娠5-6週ころの少量の出血とチクチクする腹部の痛み。変だと感じたら急いで産婦人科を受診してください。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の子宮外妊娠の言及

【腹痛】より

…また下痢になることはまれで,かえって便秘に傾くことが多い。虫垂炎
[卵巣囊腫の捻転,子宮外妊娠の破裂]
 卵巣囊腫の捻転は,突然に出現する下腹部痛で始まり,実際には虫垂炎とよく似た症状であるから,女性の場合,虫垂炎が疑われるときは必ず考慮しておかねばならない。一方,子宮外妊娠の破裂は,突発する下腹部の激痛とともにショック症状,貧血症状が著しく,性器出血などがある。…

※「子宮外妊娠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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