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学校事故 がっこうじこ

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世界大百科事典 第2版の解説

がっこうじこ【学校事故】

一般に学校管理下の範囲において発生した児童,生徒および幼児の災害事故を指す。〈学校事故〉と慣習的に呼称されるが,法令上の用語ではない。学校施設の火災,水害などは〈学校災害〉,教職員にかかわる事故は〈公務災害〉としておのおの法令,条例の規定がある。学校事故は1960年代から激増しはじめ,81年度学校安全会の給付件数だけで125万件に及ぶ。子どもの生命,身体の安全を保護すべき学校で,子どもの事故が多発するという矛盾から,学校の環境・管理・指導,学校設置者や国の教育条件整備のあり方,救済措置が問われている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

学校事故
がっこうじこ

学校の「管理下」(後述)で発生する事故。負傷や疾病の原因となる。学校災害と同義で用いられることがあるが、災害は事件・事故によって引き起こされるものであり、両者は区別されるべきである。なお学校の管理下で発生した熱中症や突然死(心臓系、中枢神経系など)も、学校事故に分類されている。[渡邉正樹]

学校事故の特徴


 学校事故による災害の大半を占めるのが負傷であるが、負傷が発生した状況は校種によって異なる。小学校ではほぼ半数の負傷が休憩時間に発生しているが、中学校・高等学校では課外指導がもっとも多く、ついで各教科等となっている。課外指導での負傷では運動部活動が、各教科等では教科体育がその大半を占めている。なお男女比では、どの校種でも男子の方が女子よりも高い。
 災害共済給付によって障害見舞金の対象となる災害については、体育的活動中(教科体育、体育的クラブ、体育的行事、課外指導における部活動)に発生する危険性が高い。とくに中学校、高等学校における運動部活動では、歯の欠損などの歯牙(しが)障害や視力・眼球運動障害をはじめとする重大な災害が発生している。また死亡に関しては、心臓系をおもな原因とする突然死がもっとも多い。先天性心疾患のような疾病が背景にあることが多いが、打撲による心臓震盪(しんとう)(胸部に衝撃が加わることで心室細動がおこり、心停止するもの)の発生もある。
 なお、学校の「管理下」とは、独立行政法人日本スポーツ振興センターによる災害共済給付の対象となる範囲を示すものであり、授業中(保育中)はもちろん、学校の教育計画に基づく課外指導中、休憩時間中および学校の定めた特定時間中、通常の経路および方法による通学(園)中、寄宿舎にあるときなどを含んでいる。[渡邉正樹]

学校事故の原因


 学校事故の原因は、大きく人的要因と環境要因に分類することができる。ただし、ほとんどの事故において、人的要因と環境要因の両者が関連して発生していると考えられる。人的要因としては、児童生徒の発育・発達段階、心身状態、規範意識、行動、服装などがあげられる。環境要因としては、場所、天候、時間、施設・設備、用具などがあげられる。たとえば、階段からの転落事故を要因から分析すると、人的要因としては、階段の駆け上がりや手すりを滑って遊ぶ行為などが、環境要因としては滑りやすい階段、転落防止ネットの不設置などがあげられる。学校事故の原因を分析することは、事故防止対策を進めるうえで非常に重要である。また独立行政法人日本スポーツ振興センターのサイト上にある「学校事故事例検索データベース」は、学校事故の実態を知ることに大いに役だつ。[渡邉正樹]

学校事故の防止


学校事故および災害を防止する活動は、学校安全の活動として行われる。学校安全のねらいは、「自他の生命尊重を基盤として、自ら安全に行動し、他の人や社会の安全に貢献できる資質や能力を育成するとともに、積極的に安全な環境づくりができるようにすること」とされる。すなわち学校安全には、学齢期はもちろんのこと、生涯にわたって安全な生活を送るために、事件・事故および災害についての理解を深め、安全に行動するための能力や態度を身につけ、進んで社会の安全に貢献することができるためのさまざまな活動が含まれる。
 学校安全は、学校における児童生徒等の安全にかかわる諸活動で構成される。諸活動とは、児童生徒等が主体(自分自身)や外部環境に存在するさまざまな危険を制御して安全に行動することを目ざす活動である「安全教育」、そして児童生徒等を取り巻く外部環境を安全に保つための活動である「安全管理」である。また安全教育と安全管理の活動を円滑に進めていくための組織活動の役割も必要とされる。
 学校安全の領域は、生活安全、交通安全、災害安全(防災)とに分けられる。「生活安全」にかかわる内容としては、(1)教科等の学習時における安全、(2)特別活動における安全、(3)始業前、休憩時間、清掃時間、放課後等における安全、(4)登下校(園)や家庭生活などにおける安全、(5)犯罪被害の防止などが含まれる。「交通安全」にかかわる内容としては、(1)道路歩行時の安全、(2)交通機関利用時の安全、(3)自転車の点検・整備と正しい乗り方、(4)二輪車や自動車の特性の理解と安全な利用、(5)幼児、高齢者、障害のある人等の交通安全に対する配慮、(6)安全な交通社会づくりへの参画などが含まれる。また「災害安全(防災)」では、(1)火災の防止と安全な行動、(2)地震災害の防止、(3)火山災害の防止、(4)気象災害の防止、(5)原子力災害発生時の安全な行動、(6)地域の防災活動の理解と積極的な参加、(7)災害時における心のケアなどがあげられる。
 また、2001年(平成13)6月に発生した大阪教育大学附属池田小学校における児童殺傷事件以降、学校における危機管理の整備が進められている。文部科学省による、学校における危機管理の目的は「子どもや教職員等の生命や心身等の安全を確保することである。そのため、危険をいち早く発見して事件・事故の発生を未然に防ぎ、子どもや教職員等の安全を確保することが最も重要である。併せて万が一事件・事故が発生した場合に、適切かつ迅速に対処し、被害を最小限に抑えること、さらには事件・事故の再発防止と教育の再開に向けた対策を講じること」である。学校における危機管理には安全教育に関する事項、学校管理に関する事項および安全に関する組織活動が含まれている。すなわち学校安全の3つの活動にまたがって行われる活動ととらえることができる。[渡邉正樹]

学校事故防止にかかわる法令等


 学校事故に関連する法令としては、建築基準法、消防法のような一般的な法令のほか、学校保健安全法(2009年4月施行)がある。学校保健安全法では、総合的な学校安全計画の策定、学校環境の安全確保、危険発生時対処要領(危機管理マニュアル)の策定、警察等関係機関や地域のボランティア等との連携による学校安全体制の強化などが定められている。とくに施設設備に関しては、定期的に安全点検を行い、もし問題が発見された場合は遅滞なく必要な措置を講じるか、措置が困難な場合は学校設置者に申し出ることになっている。
 また独立行政法人日本スポーツ振興センター法では、前述の災害共済給付制度に関する業務について規定されている。学校の施設設備については、文部科学省より「学校施設整備指針」が出され、計画・設計段階の基本的な考え方や留意事項が示されている。[渡邉正樹]

学校事故の責任


 学校事故に関して責任が問われるのは、(1)児童生徒間で生じた事故、(2)教職員が児童生徒に対して不法行為をした場合、(3)学校の施設・設備に瑕疵(かし)があり、それが原因で児童生徒に災害が生じた場合に分けられる。このような学校事故が生じると、学校関係者が法的責任を負うことがある。学校事故に対する法的責任には「民事上の責任」「刑事上の責任」「行政上の責任」がある。民事上の責任とは、民法に基づき、事故被害者に対して損害を賠償する責任である。国公立学校で事故が発生した場合に国家賠償法が適用される。私立学校の場合は民法が適用される。刑事上の責任では、学校事故の加害者に対して刑罰等を科すことであり、学校関係者に違法行為があり、行為と結果の間に因果関係が認められる場合に刑事上の責任が生じる可能性がある。行政上の責任とは、国や地方公共団体から国公立学校の教職員に対して科す責任であり、具体的には懲戒処分等の措置が行われる。一般に私立学校の場合も、類似した規定が設定されている。[渡邉正樹]
『文部科学省著『「生きる力」をはぐくむ学校での安全教育――安全教育参考資料』(2001・日本スポーツ振興センター) ▽渡邉正樹編著『学校安全と危機管理』(2006・大修館書店) ▽渡邉正樹著『新編学校の危機管理読本』(2008・教育開発研究所)』

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世界大百科事典内の学校事故の言及

【学校安全会】より

…学校安全の普及充実と学校事故・災害の共済給付とを行う特殊法人。正称は日本学校安全会。…

※「学校事故」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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