学習に関する心理学で、西欧の伝統的見方からは要素間の連合の成立として扱われ、アリストテレス以来、同等、対比、時空的接近の三つの規則によるものとされた。とくに時空的接近が重視されたが、当初は意識内容としての表象や観念の間の連合であった。実験心理学の進展につれて、刺激―反応の連合が主題となり、学習研究は条件づけによる研究と同じ意味にも用いられている。
[小川 隆]
学習の科学的研究は19世紀後半のエビングハウスの記憶研究、パブロフの条件反射学、ソーンダイクの学習実験などに端を発して今日に及んでいる。
エビングハウスは言語材料の暗記学習rote learningを実験したが、主として無意味綴(つづ)りの配列を用い、材料の多寡、親近さ、有意味性、呈示順序、反復回数などを条件変化し、反応時間、反応数、反応量などを比較した。材料の量が多いほど学習は困難であるが、同量では親近さ、有意味性のあるほど容易である。反復に対し学習は、一般にS字型の経過をたどって進行することが明らかになったが、一定順序で項目を呈示すると、順序の両端では学習がしやすく、中心に近いほど困難な系列位置効果を示すことも明らかにされた。また、その後この方法は系列予言法という学習実験法(記憶研究法)として定着した。
パブロフは空腹のイヌの唾液(だえき)分泌について条件反射の事実を確かめたが、ベルの音などの中性刺激を食物と対呈示し、これを繰り返すうちに、中性刺激だけで食物に対すると同様な唾液分泌の反射を生じさせたのである。本来、生理に関するこの方法は古典条件づけclassical conditioningといわれるが、原理として広く心理学で用いられ、簡単な学習機構の解明に役だっている。
ソーンダイクは、問題箱による動物の学習実験を行ったが、たとえば空腹のネコを箱に入れ、戸を開いて出てくることを学習させた。これを観察して試行錯誤による成功と成功に導く反応が強められ、不成功に終わる反応が弱められる進行過程を認め、効果の法則law of effectと練習の法則law of exerciseを樹立した。
[小川 隆]
条件づけによる学習研究はいくつかの理論を生んだが、刺激―反応の接近がその反応を生じやすくするというガスリーE. R. Guthrieの接近論Contiguity theory、刺激間の認知を強調しその機構を、反応を惹起(じゃっき)する記号体系とみ、これが要求の事態で学習を成立させるというトールマンの認知論Cognitive theory、反応間の強化を重視し、要求の低減と強化の回数とを基礎にした仮説構成を扱うハルの強化論reinforcement theory、刺激―反応―強化の随伴関係を記述的に扱うスキナーの実験的行動分析などが代表的なものである。
これらの立場の間に、学習がどのような要因によって規定されるか、学習過程が1種類か否か、連続的か非連続的かなどが論議されてきたが、近来は、論点についても領域についても細分化されている。たとえば強化についても、単純な量や回数ではなく、強化のスケジュール、事物としての強化(食物)よりも、強化反応(食事行動)と反応間の関係などが問題とされている。
[小川 隆]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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