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宗教地理学 しゅうきょうちりがくgeography of religion

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

宗教地理学
しゅうきょうちりがく
geography of religion

信仰と崇拝の一体系である宗教を地理学的に考察する分野。人文地理学の一分野であるが,日本では,まだ未開拓の領域である。 D.ソーファーの『宗教地理学』 (1967) では研究対象として,宗教体系と制度の発達と,環境的背景の関係,宗教体系と制度による環境の変容,宗教体系と制度の地域組織化の過程,諸宗教の地理的分布と普及の動態などをあげている。石田英一郎が指摘した西南アジア乾燥地域に成立したユダヤ教キリスト教イスラム教の一神教群と,南アジア,東アジアの湿潤地域に成立したヒンドゥー教や,道教の多神教群の対比は示唆に富む。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

宗教地理学
しゅうきょうちりがく
geography of religions

宗教的原則から地上の空間秩序を考えた宗教教理上の地理学religious geographyや、伝道活動の資料である宗教分布図などを媒体として、歴史的に発展してきた新しい学問分野である。宗教とそれが行われている土地(自然的・社会的環境)との相互関係、宗教体系どうしの空間的な相互関係を調査し資料化し、理論構成を計るのが、今日の宗教地理学の目的であるが、これまでの成果を主要な研究課題にまとめると、次のように整理することができよう。
(1)宗教に影響を与えたエコロジカル(生態学的)な環境 ユダヤ教にみられる牧畜および農耕に関連した祭式、牧畜・狩猟と一神教、農耕と多神教との関係性を論じた研究など、多くの研究業績がみられる。
(2)土地造りにおける宗教の影響 食物タブーに基づく動植物の集散状況、宗教に由来する土地の呼称、宗教的建造物(ピラミッド、教会)、宗教的造地などが問題に取り上げられる。
(3)宗教と経済活動 教義に基づく職業規制のジャイナ教徒、儀礼用ワインの産業化、経済活動を支える宗教倫理の研究。
(4)宗教分布 数量的な研究にとどまらず、宗教体系相互間の関係も扱われ、それらの平和的共存・競争関係、排斥関係に分けて考える。
(5)生活様式における宗教的要素 住居、食物、衣服、生活慣習における宗教的要素をみる。
(6)宗教組織と政治組織 国家と宗教集団、宗教集団と政党、宗教と政治の関係分離をテーマにする。
 なお、(3)と(6)は宗教社会学との関連が深い研究範囲であって、相互に影響を与え合って、研究が進みつつある。[生野善應]
『ソーファー著、徳久球雄・久保田圭伍・生野善應訳『宗教地理学』(1971・大明堂)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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