官場現形記(読み)かんじょうげんけいき(その他表記)Guān chǎng xiàn xíng jì

改訂新版 世界大百科事典 「官場現形記」の意味・わかりやすい解説

官場現形記 (かんじょうげんけいき)
Guān chǎng xiàn xíng jì

中国,清末の白話長編小説。李宝嘉(1867-1906。字は伯元)が南亭亭長の筆名で新聞に連載,1903-06年(光緒29-32)単行。全60回。官場とは官界,現形とは〈実体を現す〉の意。その書名のとおり,当時の官界の腐敗堕落した内幕を描いたもの。特定の主人公はおらず,総督クラスの高級官僚から佐雑クラスの下っ端役人に至るまでの各層の役人をめぐるエピソードを,《儒林外史》の構成にならい数珠(じゆず)つなぎにしている。作者の李宝嘉は,科挙試に失敗したあと上海でジャーナリズムの世界に投じただけに,官界に対する批判的な目は厳しい反面,戯作者ふうの遊戯的な姿勢からも脱しきれなかった。この小説も,亡国の危機をはらんだ清末政官界の裏面を知るには格好の小説であり,清末小説の傑作の一つに数えられているが,作者の政治思想の保守性とあいまって,その描写の過剰な誇張は,むしろ限界となっているといえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「官場現形記」の意味・わかりやすい解説

官場現形記
かんじょうげんけいき

中国、清(しん)末の小説。李宝嘉(りほうか)(字(あざな)は伯元(はくげん)。1867―1906)作。1901年から05年に、南亭亭長(なんていていちょう)の筆名で逐次出版。作者は上海(シャンハイ)で新聞記者をやり、『指南報』『遊戯報』『海上繁華報』などを経営し、多くの小説を書いた。清末の譴責(けんせき)(暴露)小説の代表作で、義和団事件後の清末の国家社会の情勢、官界の堕落・腐敗のようすをむき出しに描き、実録以上に当時の空気を伝える。軍機大臣から下級官吏まで、役人の収賄、売官、蓄妾(ちくしょう)など、その裏面を鋭く痛烈に暴露したが、暗黒社会をいかにすべきかの志向はない。作者は『儒林外史(じゅりんがいし)』の挿話(エピソード)をつなげる章回体(しょうかいたい)をまね、初め全10編(120回)の計画であったが、5編(60回)で未完のまま39歳で病死した。

[志村良治]

『入矢義高訳『中国古典文学大系50・60 官場現形記』(1968、69・平凡社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「官場現形記」の意味・わかりやすい解説

官場現形記
かんじょうげんけいき
Guan-chang xian-xing-ji

中国,清末の口語章回小説李宝嘉の作。5編 60回。初めは 10編 120回になる予定であったが,第5編のなかばで作者が病没したため,友人が第5編の未完の部分だけを書き足して 60回としたもの。光緒 27 (1901) ~32年刊。義和団事変以後盛んになってきた,政治の裏面をあばき悪弊をえぐりだして時の政治に抗議する暴露小説。魯迅のいう譴責小説の開祖であり,代表作でもある。清末期の混乱した社会の,収賄,売官など官僚群の腐敗ぶりを描き出し,特に小役人の描写に精彩がある。ほとんどの登場人物にモデルがあるといわれる。主人公も一貫した筋もなく,多くの挿話を積重ねて長編とする『儒林外史』と同じ手法をとっている。

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百科事典マイペディア 「官場現形記」の意味・わかりやすい解説

官場現形記【かんじょうげんけいき】

中国,清の李宝嘉の風刺小説。全10編,1編12回の予定で1901年以後《上海世界繁華報》に連載し好評。5編60回で病没。書名は官界という怪物の正体を暴露した記録という意味で,義和団事件前後の中国官界の腐敗を描く。

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