政府と民間が共同で出資し、企業や開発計画などに投融資するファンド。第2次安倍政権時に成長戦略の柱として相次いで設立された。民間企業だけではリスクが大きい分野に資金を投じながら政策推進を図る。ただ、省庁ごとにファンドが乱立し、計画通りに投資が進まなかったり損失を抱えたりする問題点も指摘された。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
政府と民間が特定の目的のために資金を出し合って投融資するファンド(基金)。民間企業だけではリスクをとりにくいが成長が期待される分野へ、政府が公的資金を供給してリスクを補完し、民間資金の呼び水にするねらいがある。国が中心となって資金を出し、民間の企業や事業に投融資するファンドを、とくに官製ファンドとよぶことがある。投融資先事業が軌道に乗れば、配当や収益を分配できるほか、保有株式売却による売却益も期待できる。第二次安倍晋三(あべしんぞう)政権は、成長戦略の一環として2015年(平成27)までに14の官民ファンドを新設・機能拡充した。ただ官民ファンドは民業を圧迫したり民間競争をゆがめる懸念があるほか、企業経営者のモラルハザード(倫理の欠如)や、損失が発生した場合に過大な国民負担を生むおそれもあり、存続期間を限った時限措置とすることが望ましいとされている。2013年5月、官民ファンドの投資内容を評価・点検する「官民ファンド総括アドバイザリー委員会」が設置され、会計検査院は2017年3月末時点で、14ある官民ファンドのうち6ファンドが損失状態になっていると報告した。これを受け、安倍政権は産業革新機構を軸に、官民ファンドの統廃合の検討をしている。
2018年6月時点で設立されている官民ファンドは、以下の14である(資本金等は官民あわせた額)。(1)中小企業基盤整備機構(2004年設立。中小・ベンチャー企業を支援。資本金1兆1029億2128万8640円)、(2)産業革新機構(2009年設立。先端技術の事業化を支援。資本金3000億1000万円)、(3)地域経済活性化支援機構(2009年設立。地域再生・活性化を支援。資本金260億8480万円)、(4)農林漁業成長産業化支援機構(2013年設立。農林水産業の六次産業化を促す。出資金319億0200万円)、(5)国立大学法人評価委員会官民イノベーションプログラム(国立大学の研究開発を支援。2013年より4大学に合計1000億円出資)、(6)日本政策投資銀行競争力強化ファンド(2013年に設立し2015年に新規投融資を終了。企業のイノベーションや価値向上の取組みを支援。ファンド総額1500億円で、このうち1279億円を投融資)、(7)環境不動産普及促進機構(2013年設立。老朽ビルなどの不動産の耐震化・省エネ化を促進。ファンド総額350億円)、(8)グリーンファイナンス推進機構(2013年設立。低炭素社会の創出と地域活性化に役だつ事業の実現。基金総額45億6200万円)、(9)民間資金等活用事業推進機構(2013年設立。民間資金によるインフラ整備を支援。資本金200億円)、(10)クールジャパン機構(登記社名は海外需要開拓支援機構。2013年設立。日本の特色を生かした商品等の海外における需要開拓を支援。出資金693億円)、(11)海外交通・都市開発事業支援機構(2014年設立、海外で交通・都市開発事業を行う企業などへ資金供給・専門家派遣、出資金464億4500万円)、(12)科学技術振興機構(2015年4月設立。世界トップレベルの研究開発やイノベーションを先導。資本金2173億8793万6002円)、(13)日本政策投資銀行特定投資業務(2015年設立。地方企業などの新規事業を時限・集中的に育成。ファンド総額3300億円)、(14)海外通信・放送・郵便事業支援機構(2015年設立。海外で電気通信・放送・郵便事業を行う企業などに資金供給・専門家派遣、資本金89億5700万円)。
[矢野 武 2018年12月13日]
(2013-1-9)
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