江戸時代前半に行われた検見法の一つ。定められた収穫額に不足する量を反別に直し,貢租額を減額する方法。近世初頭の検地に基づく上・中・下・下々などの耕地の等級ごとに定められた根取米(1反当り取米)を,籾5合摺り(籾1升が米5合に当たる)として2倍し,300坪で除して1坪当りの籾量を出す。これを当合(あたりあい)といい,代官・手代が各田品(上・中・下・下々など)ごとに検見坪刈りし,検見籾量が各当合より多いときは過剰分を不問に付し,少ないときは不足分を損毛として田品ごとの反別もしくは石高に換算して控除(畝引)し,残りの反別または石高に対して当合を乗じて年貢を賦課する。元来,田方稲作に行われたが,畿内では畑方綿作にも適用された。享保期(1716-36)には検地当時の田品・石盛が現実にそぐわなくなり,根取米・当合を廃し,実際の収穫高をもとに年貢を決定する有毛検見(ありげけみ)取法に転換した結果,幕領では畝引検見取法は行われなくなった。
執筆者:大野 瑞男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
根取(ねどり)検見、反取(たんどり)検見ともいう。江戸時代、主として享保(きょうほう)年間(1716~36)以前に施行されていた徴租法の一つ。検地によって決定された石盛(こくもり)(一反当りの標準収穫量)に免(めん)(年貢率)を乗じて算出された高を根取とよび、これを平年作の際の年貢高とした。しかし、不作の年には、実際に検見坪刈(つぼがり)を行い、不作分を反別に換算し、これを総反別より畝引(控除)したのち、残りの反別に免を乗じて年貢高を決定するという方法がとられた。これを畝引検見という。
この畝引検見は、生産力の上昇分を十分吸収できるものではなかったため、享保の改革の年貢増徴政策の展開のなかで、定免(じょうめん)法(一定期間免率を固定化する徴租法)や有毛(ありげ)検見法(根取を無視し、全反別について一筆ごとの坪刈を行い、実際の出来高を基に年貢高を決める徴租法)などの新しい徴租法が採用されるようになっていった。
[大石 学]
根取(ねどり)検見・段取検見とも。江戸時代の検見の一種。不作のために収穫量が不足する場合,不足分を段別に換算することによって貢租量を決定する方法をいう。その方法は,上・中・下の等級別石盛(こくもり)から,五公五民の租率で1段当りの基準取米(根取米)を計算し,さらに5合摺りの条件で1坪当りの籾量(当合(あたりあい))を算出し,この当合と実際の坪刈による等級別の収穫量(有籾量)との比較を行い,不作の年は収穫量の不足額に応じて基準段別を減じ(畝引(せびき)),残りの段別に根取米を乗じて年貢高を決定する。関東ではこうした段取畝引検見が,また上方筋では厘取(りんとり)畝引検見が行われたが,両者は計算過程が異なるだけで大きな差はない。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…しかしこの制法の施行や検見の手続は不明である。 検見の仕法は後述のように各種があるが,幕領では享保期(1716‐36)までは畝引検見(せびきけみ)取法が行われた。幕府は1718年定免(じようめん)制施行の準備を命じ22年ごろからおいおいこれが実施されるとともに,有毛検見(ありげけみ)取法に転換していった。…
…この段階では租率(免(めん),取箇(とりか)ともいう)は可能な限り高く決められ,村高×租率によって年貢高は定まった。 かかる方式は農村の疲弊をもたらしたので,17世紀中葉の寛永の飢饉を契機に農政の方針は小農経営の保護育成策に転じ,畝引検見(せびきけみ)法が導入された。これは平年作の反(たん)当年貢高(根取米(ねどりまい))を定めておいて,不作年には坪刈(つぼかり)によって不作分の反別を減ずる(畝引)ことによって年貢高の調節を計るものであった。…
※「畝引検見」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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