北海道,札幌市南西部,豊平川の上流にある温泉。1866年(慶応2)美濃の僧定山がアイヌの案内で発見,その開発に尽くし,湯治場をつくって湯守をしたのに始まるといわれる。71年(明治4)当時の東久世開拓使長官がその功績をたたえて定山渓と命名した。付近は約1kmにわたって豊平川渓谷に分布する石英斑岩の節理の割れ目から温泉が湧出する。定山の死後元湯経営は他に移ったが,その下流には温泉宿を経営する者も現れ,明治末には温泉宿も3軒となった。1918年には札幌から定山渓鉄道が開設され,温泉への客も増え,さらに付近での発電所建設,豊羽(とよは)鉱山開発が行われて鉄道利用客も増えた。29年鉄道の電化で本格的な温泉街が形成された。第2次大戦後,官庁,民間会社などの保養施設が激増し,近代的なホテルが建ち並ぶ温泉街に変わった。温泉街を通る国道230号線(通称,定山渓国道)も整備され,バスが30分で札幌中心部と結び,札幌の奥座敷と称せられるようになった。鉄道は69年に廃止されたが,温泉付近の観光開発は進み,渓谷沿いの自然歩道,札幌国際スキー場がつくられ,四季を問わず観光客でにぎわっている。泉質は鉄,ホウ酸,硫黄,食塩と多彩で,泉温は80~90℃と高く,毎時20万lの豊富な湧出量を誇っている。
執筆者:奥平 忠志
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