「定」「考」の順を逆にして「こうじょう」と読むのを故実とするが、「左経記」の例は便宜的にここにあげた。「上皇」と音が似ているので順読を避けるという。「壒嚢鈔‐五」に「定考(かうちゃう)の事〈略〉此人々を選ひ出し、定め侍るを、定考と申也。但文字には、定考と書たれ共、打返して、かうちゃうと読み付り。是又口伝にて侍る也。尤故ある事となん」とある。
令制太政官の官人の位階授与の手続の一つ。〈上皇(じようこう)〉の音読に通ずるのを避けて,転倒して読むのを例とし,ひいては〈考定〉とも書いた。8月11日を式日とし,前年8月1日以降1年間の太政官の長上官(常勤者)の勤務成績を考査上申する儀。《儀式》《延喜式》の制によると,8月1日担当の少納言,弁,外記,史が太政官の考選文を作成し,11日に大臣に上申する。すなわち当日大臣以下が太政官庁に参着,少納言以下が参入して,考(勤務評定)にあずかるべき者と,考にあずからざる者の累計,その内訳として,考の列にあらざる者(大臣),第(9等の評定)を定めざる者(五位以上),中の上等第の人数および各人の上日(出勤日数)などを読みあげる。この考選文は10月1日式部省に下されるが,その951年(天暦5)の実例が《政事要略》に収められている。また定考の翌日,太政官の番上官(当番勤務)の勤務成績を考査上申する儀があり,これを〈小定考(ここうじよう)〉といった。定考は2月11日の列見(れつけん)とともに,官中の二大行事とされ,その際の饗饌と禄物は太政官厨家が弁備したが,平安末期には,近江国細江保が列見定考料所に充てられた。
執筆者:橋本 義彦
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太政官(だいじょうかん)で官吏の執務成績を定める儀。定考と書いて「こうじょう」と逆に読む。式日は8月11日であるが、まず8月1日に三局(左・右弁官局、少納言(しょうなごん)局)でそれぞれ考文(こうもん)の案をつくり、ついで11日に長上(ちょうじょう)の官人の考を定める。定の儀は、少納言が当年の考に預る者、預らない者、考第(こうだい)が中上以上の者の人数を読みあげ、考を定め、終わって宴、音楽がある。翌12日には番上(ばんじょう)の考を定める小定考(ここうじょう)がある。
[渡辺直彦]
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