デジタル大辞泉
「定」の意味・読み・例文・類語
じょう〔ヂヤウ〕【定】
[名]
1 それと決まっていること。また、いつもそうすること。
「『ろおれんぞ』のいる方へ眼づかいをするが―であった」〈芥川・奉教人の死〉
2 確かなこと。真実。
「嚊も嘗められたというが―かや」〈逍遥・役の行者〉
3 (修飾する語を受けて)その通りであること。「案の定」
4 仏語。精神を集中して心を乱さないこと。三昧。禅定。
5 弓の弦の中心を麻で巻いて太くし矢筈をかけるところ。さぐり。
6 (限度・範囲の意から転じて、接続助詞的に用いて)…であるものの。…とはいうものの。
「小兵といふ―十二束三伏弓は強し」〈平家・一一〉
[副]必ず。きっと。
「―、千年万年の齢をたもち」〈虎寛狂・松脂〉
[類語](1)さだめ・規則・制度・約束・決まり・規定・規程・条規・定則・規約・規準・規矩準縄・規律・ルール・コード・本則・総則・通則・細則・付則・概則・おきて
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じょうヂャウ【定】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 定まったこと。さだまり。必然のこと。
- [初出の実例]「老病已に窮れり、死去定なり」(出典:正法眼蔵随聞記(1235‐38)六)
- ② 確かなこと。真実。
- [初出の実例]「やい、してごくらくが有と云せつもあり、又なひと云せつも有、うむの二けんがきはまらぬ、有がぢゃうか、又なひがぢゃうか」(出典:虎明本狂言・武悪(室町末‐近世初))
- ③ ( 上に修飾語を伴って ) その通り。確かな現実の有様。そのままの様子。
- [初出の実例]「大納言の北のかたは、ただ今の定にては、うしろめたかるべきにあらず」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)二)
- 「此の定(ぢゃう)に念仏を申さば疑ひ无く極楽に生れなむ」(出典:今昔物語集(1120頃か)一九)
- ④ 一定の限度。定まった程度。修飾語をうけて接続助詞のように用いる。…ても。…とはいうものの。
- [初出の実例]「唐にわたりて、ひさしき定、三年、さらずば、それより近くもまで来なん」(出典:成尋阿闍梨母集(1073頃))
- 「小兵といふぢゃう十二束三伏(みつぶせ)弓はつよし」(出典:平家物語(13C前)一一)
- ⑤ 取りきめ。おきて。規定。また、禁制。
- [初出の実例]「今は御位もなきちゃうなればとて、網代車(あじろぐるま)に乗せ奉りて」(出典:栄花物語(1028‐92頃)月の宴)
- ⑥ 範囲。境界を定めること。
- [初出の実例]「ころびあふところに、かしこがほに上下よって、文覚がはたらくところのぢゃうをがうしてんげり」(出典:平家物語(13C前)五)
- ⑦ ( [梵語] samādhi の訳語 ) 仏語。ある対象に心を専注して乱れないこと、または、その状態。また、それによって得られる特殊の精神状態をいう。三昧(さんまい)。禅定(ぜんじょう)。
- [初出の実例]「定と恵と相ひ扶けて善くに至る」(出典:観智院本三宝絵(984)上)
- ⑧ 弓弦(ゆづる)の中心を麻で巻いて太くし筈をかける所。さぐり。
- [初出の実例]「さぐりといふはよるの言葉ひるぢゃうと云べし」(出典:弓法秘伝聞書)
- [ 2 ] 〘 副詞 〙 必ず。きっと。確かに。
- [初出の実例]「さらう時には、余祭としたらばぢゃう合ふべきぞ」(出典:史記抄(1477)一〇)
さだめ【定】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「さだめる(定)」の連用形の名詞化 )
- ① 物事を決めること。また、決心すること。決定。
- [初出の実例]「その程の御さだめ、よくうけ給はりてなん仕うまつるべかなり」(出典:落窪物語(10C後)一)
- ② 物事を決定するための議論。評議。うち合わせ。
- [初出の実例]「とほくはなち遣すべきさだめなども侍るなるは、さま異なる罪に当るべきにこそ侍るなれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
- ③ 事を判定すること。評価すること。判断。裁定。
- [初出の実例]「始めより知らぬ事なれば、われはの定にはいかが聞えん」(出典:落窪物語(10C後)三)
- ④ 決められていること。きまり。おきて。規定。
- [初出の実例]「秋の司召あるべきさだめにて、大殿もまゐり給へば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
- ⑤ 生まれる前から決められていること。運命。
- [初出の実例]「恨みなはてそ世の運命(サダメ) 無限の未来後にひき 無限の過去を前に見て 我いまここに惑あり」(出典:天地有情(1899)〈土井晩翠〉暮鐘)
- ⑥ 安定すること。不変であること。
- [初出の実例]「世の中のかくさためもなかりければ、かずならぬ身は、なかなか心やすく侍る物なりけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
さだまり【定】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「さだまる(定)」の連用形の名詞化 )
- ① 物事が決まること。
- [初出の実例]「明日二宮御方青蓮院に御さたまり也」(出典:言国卿記‐文明八年(1476)八月二一日)
- ② 決まっている物事。きめ。きまり。
- [初出の実例]「年貢の定りのあるをまって、ををうとらるるぞ」(出典:玉塵抄(1563)七)
- 「昆布鱈に鰤の糀漬といふお定(サダマ)りでもあるめへとかいって」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
- ③ 定まった運命。さだまりごと。宿命。
- [初出の実例]「すゑ遂られぬ恋ならば、最初から結ばであるべきものを、儘にならぬが定(サダマ)りか」(出典:人情本・英対暖語(1838)四)
- ④ こうしようと決めたこと。決意。覚悟。
- [初出の実例]「他人がいろいろわるく言たりしゃくったりすると、否にもなったりしても、また恋ふ気になるのも、定(サダ)まりはないやうだけれど」(出典:人情本・春色辰巳園(1833‐35)後)
- ⑤ 治まること。しずまること。人が一つの状態におちつくこと。
- [初出の実例]「父は命の有る内に、是非娘の身の定(サダマ)りを見て安心為たいと言ふし」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏)
さだん【定】
- 〘 名詞 〙 暦の中段に記された十二直(じゅうにちょく)の一つ。この日は造作、転宅、婚礼にはよいが、訴訟、旅立ちなどは忌むべきであるとする。
- [初出の実例]「さて婚礼の吉日は縁をさだんの日を選み」(出典:長唄・再春菘種蒔(舌出し三番叟)(1812))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「定」の読み・字形・画数・意味
定
常用漢字 8画
[字音] テイ・ジョウ(ヂャウ)
[字訓] さだめる・やすらか
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
宀(べん)+正。〔説文〕七下に「安なり」とあり、安定・安居の意とする。星の定星はまた「営室」ともいい、設営のとき、その星によって方位を定めた。(てん)と声義が近い。また(てい)の初文で、題・額(ひたい)の意に用いる。
[訓義]
1. さだめる、位置をさだめる、設営の方位を定める。
2. おさまる、やすらか、おだやか。
3. ただす、きめる、ととのえる。
4. ひたい。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕定 サダム・サダシ・シヅム・トドム・ヤム・マサ・ユビサス・シヘタリ・ヲハリ・マタシ・ヰル・ウヅム・ヤスム・ヒタヒ
[声系]
〔説文〕に定声として錠、〔玉〕に掟を収める。綻は袒の異体の字である。
[語系]
定dyeng、dyenは声義近く、(てん)に定の意がある。また(寧)nyengは安と互訓の字。題dyeは題額、定をその義に用いることがある。
[熟語]
定僧▶・定位▶・定員▶・定価▶・定格▶・定款▶・定期▶・定議▶・定義▶・定擬▶・定業▶・定極▶・定銀▶・定形▶・定計▶・定見▶・定検▶・定▶・定限▶・定功▶・定考▶・定購▶・定交▶・定婚▶・定魂▶・定策▶・定産▶・定志▶・定止▶・定視▶・定時▶・定式▶・定住▶・定準▶・定処▶・定章▶・定場▶・定情▶・定色▶・定心▶・定神▶・定親▶・定数▶・定制▶・定省▶・定性▶・定星▶・定睛▶・定勢▶・定説▶・定然▶・定息▶・定則▶・定奪▶・定端▶・定直▶・定鼎▶・定度▶・定評▶・定分▶・定辺▶・定保▶・定封▶・定法▶・定謀▶・定本▶・定名▶・定命▶・定問▶・定約▶・定理▶・定律▶・定量▶・定礼▶・定例▶・定論▶
[下接語]
安定・一定・雨定・仮定・改定・画定・確定・刊定・勘定・戡定・簡定・鑑定・規定・擬定・議定・協定・欽定・決定・建定・検定・限定・固定・公定・考定・更定・肯定・校定・克定・国定・剋定・昏定・査定・裁定・刪定・算定・暫定・指定・手定・修定・初定・所定・神定・新定・審定・人定・推定・綏定・正定・制定・設定・定・翦定・選定・禅定・創定・想定・測定・断定・治定・勅定・鎮定・特定・内定・難定・入定・認定・判定・比定・否定・必定・評定・不定・撫定・風定・平定・保定・法定・未定・明定・約定・予定・理定・釐定・略定・論定
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
定
じょう
心を一つの対象に集中し散乱させない精神作用、およびその状態をいう。原語はサマーディsamādhiで、三昧(さんまい)、三摩地(まじ)、三摩提(まだい)と音写される。定はその意訳語である。定は、仏教の実践大綱である戒(かい)、定、慧(え)の三学にもあり、また釈尊(しゃくそん)の八正道(はっしょうどう)の一つに正定(しょうじょう)がある。一般に禅定(ぜんじょう)という場合には種々の精神統一を総称する語として用いられるが、本来は禅(静慮(じょうりょ))と定(三昧)の2語の合成語である。大乗仏教では悟りを得るための実践方法や極楽(ごくらく)浄土へ往生(おうじょう)するための行として定が説かれた。
[田上太秀]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
定
じょう
仏教用語。高度の精神集中のこと。ある対象に精神を集中して乱れない状態。その境地の深化の程度に応じて多くの種類,名称がある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の定の言及
【三昧】より
…サンスクリットのサマーディsamādhiの音訳で,三摩地(さんまじ),三摩提(さんまだい)とも音訳される。意訳は等持(とうじ)あるいは定(じよう)。禅定を修する際,ある一つの対象に対して,まっすぐ平等に働き(等持),他の対象に気が移ったり乱れたりしないこころの状態(定)をいう。…
【仏教】より
…現在,(1)スリランカ,タイなどの東南アジア諸国,(2)中国,朝鮮,日本などの東アジア諸国,(3)チベット,モンゴルなどの内陸アジア諸地域,などを中心に約5億人の教徒を有するほか,アメリカやヨーロッパにも教徒や思想的共鳴者を得つつある。(1)は前3世紀に伝道されたスリランカを中心に広まった南伝仏教([南方仏教])で,パーリ語仏典を用いる上座部仏教,(2)はインド北西部から西域(中央アジア)を経て広まった[北伝仏教]で,漢訳仏典を基本とする大乗仏教,(3)は後期にネパールなどを経て伝わった大乗仏教で,チベット語訳の仏典を用いるなど,これらの諸地域の仏教は,歴史と伝統を異にし,教義や教団の形態もさまざまであるが,いずれもみな,教祖釈迦をブッダ(仏)として崇拝し,その教え(法)を聞き,禅定(ぜんじよう)などの実践修行によって悟りを得,解脱(げだつ)することを目標とする点では一致している。なお,発祥の地インドでは13世紀に教団が破壊され,ネパールなどの周辺地域を除いて消滅したが,現代に入って新仏教徒と呼ばれる宗教社会運動が起こって復活した。…
※「定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」