定額給付金(読み)テイガクキュウフキン

デジタル大辞泉 「定額給付金」の意味・読み・例文・類語

ていがく‐きゅうふきん〔‐キフフキン〕【定額給付金】

経済対策一環として、政府が国内に居住する個人に対して給付する定額の現金。およびその制度。生活支援・景気浮揚・地域経済活性化などを目的とする。
[補説]平成20年(2008)10月、麻生内閣が発表し、平成21年(2009)3月から給付開始。一人につき1万2000円(65歳以上と18歳以下は2万円)が給付された。令和2年(2020)4月、安倍内閣が新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の一環として実施を閣議決定し、「特別定額給付金」の名称で行ったものは、一人につき10万円が給付された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「定額給付金」の意味・わかりやすい解説

定額給付金
ていがくきゅうふきん

消費を刺激するため、国や地方自治体が消費者に一定額を補助する給付金不況期や景気低迷期に、家計の負担を軽減し、地域経済を活性化する目的で支給される。広く国民に支給するケースと、低所得者など対象を絞るケースがあるが、いずれも形をかえた減税である。一般に支給事務は市区町村が行う。商品券の形で支給する「地域振興券」や、購入額に一定額を上乗せして買い物できる「プレミアム付き商品券」も全部あるいは一部が公的資金で補助されるため、定額給付金の一種とみなすことができる。定額給付金は一定の消費押し上げ効果を期待できる半面、給付額の一部が貯蓄に回る傾向があり、消費喚起効果は限定的でばらまき政策との批判をよびやすい。

 日本政府はリーマン・ショック後の2009年(平成21)、外国人を含む住民基本台帳に記載された全員を対象に定額給付金を支給した(総支給額1兆9367億円)。所得水準に関係なく、1人当り1万2000円を支給し、18歳以下の子供と65歳以上の高齢者には8000円を加算支給した。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)が流行した2020年(令和2)に、同様に全住民に一律10万円を支給(総支給額12兆8803億円)。このほか消費税率を3%から5%へ引き上げた1999年(平成11)に、15歳以下の子供や低所得高齢者世帯を対象に「地域振興券」(1人2万円、総額6194億円)を支給。2015年の消費増税時(5%→8%)には額面以上の買い物ができる「プレミアム付き商品券」(総額2372億円)を全住民に発行した。2019年の消費増税時(8%→10%)には子育て世帯と住民税非課税世帯に限定して「プレミアム付き商品券」(1人上限2万5000円、上乗せ補助額5000円、予算総額1225億円)を発行した。このほか地方自治体が独自に「プレミアム付き商品券」を発行する例もある。ただ内閣府総務省の試算では、定額給付金やプレミアム付き商品券などの景気押し上げ効果は総支給額の3~4割にとどまる。

 海外では、リーマン・ショック時にタイや台湾などが国民へ直接支給を実施。新型コロナウイルス感染症の流行に対してはアメリカ年収7.5万ドル以下の場合、成人1人最大1200ドル、子供に500ドル)、香港(ホンコン)(成人1人1万香港ドル)、シンガポール(21歳以上の全国民に600シンガポールドル)、韓国(全世帯を対象に4人以上の世帯で100万ウォン)などが直接支給を実施した。

[矢野 武 2021年5月21日]

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知恵蔵 「定額給付金」の解説

定額給付金

2008年10月に麻生首相が新総合経済対策の一環として実施を発表した生活支援策。国民一人当たり1万2千円(65歳以上と18歳以下は2万円)、総額2兆円規模を支給するとしたが、発表当初から選挙目当てのバラマキでしかなく、2兆円の有効な使い道なら他にいくらでもあると批判されてきた。09年1月5日に召集された通常国会で、08年度第2次補正予算案と関連法案の中に盛り込まれて提出され、13日に衆議院を通過した。参議院で採決されなくても、2次補正は30日後には自然成立し、関連法案は60日後に衆議院で3分の2以上の賛成で再議決できるが、与党から16人が反対に回れば否決される。民主党は社民党国民新党と共同で、2次補正から定額給付金を切り離す修正案を国会に提出し、渡辺喜美元行政改革担当相が自民党を離党するなど、政局がらみの争点となっている。
実施方法は以下の通り(08年12月末時点)。実施主体は、特別区を含む市町村。給付金と事務費は国が全額補助。対象者は、09年2月1日に住民基本台帳か外国人登録原票に登録されている者で、対象者の属する世帯の世帯主(外国人は本人)に支給される。給付の方法は、(1)申請書を市町村に郵送し振込で受給するか、(2)申請書を窓口に提出し振込で受給し、(1)(2)が不可能のときは、(3)申請書を窓口に提出し現金で受給することになる。住民票のないネットカフェ難民には支給されず、また現金ではなく口座振込では消費に結びつかないという批判がある。
当初根回しが不十分な段階で実施が発表されたため、与謝野経済財政相が富裕所得層には不要と発言するなど、閣内・与党内からも異論が続出し、所得制限実施の判断を一任された市町村からは、丸投げという批判も出ていた。首相自身も、11年度からの消費税率引き上げを発言し、給付金の景気対策効果が疑問視されていたところに、「(年収が)1億円あっても、さもしく1万2千円が欲しい人もいる」などと失言し世論の反発を招いていたが、衆議院通過前の財務金融委員会で「さもしい」発言を事実上撤回した。

(秋津あらた ライター / 2009年)

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