日本大百科全書(ニッポニカ) 「宝鶏」の意味・わかりやすい解説
宝鶏
ほうけい / パオチー
中国、陝西(せんせい)省西部の地級市。市域は渭河(いが)平原の西部に広がり、3市轄区、鳳翔(ほうしょう)、岐山(きざん)、扶風(ふふう)など9県を管轄する(2016年時点)。常住人口371万6731(2010)。この地域は三方を山地に囲まれ、前面に渭河平原を臨み、西には西域(せいいき)に至る隴関(ろうかん)、南には四川(しせん)に至る大散関(だいさんかん)を控え、関中(かんちゅう)の死命を制する要地であった。そのため周、秦(しん)、三国の蜀(しょく)など西方から関中に進出しようとする勢力の根拠地でもあった。その中心は鳳翔で、秦代に雍(よう)県が置かれて京畿(けいき)である内史に属し、漢代には右扶風、その後、扶風郡、岐州と変わり、唐代になって鳳翔府となった。現在市の中心である陳倉(ちんそう)区には秦漢以来、陳倉県が置かれ鳳翔に属してきた。宝鶏と改名されたのは唐代である。
現在は陝西と甘粛(かんしゅく)、四川を結ぶ交通、流通の中心であり、隴海(ろうかい)線が通るほか、宝成線、宝中線(宝鶏―中衛(ちゅうえい))、宝麟線(宝鶏―麟游(りんゆう))の起点である。鉄道網の整備とともに工業も発達し、機械、鉄鋼、冶金、自動車部品、紡績、食品など西安(せいあん)に次ぐ省第二の工業都市に発展している。
[秋山元秀・編集部 2017年7月19日]