日本大百科全書(ニッポニカ) 「連雲港」の意味・わかりやすい解説
連雲港
れんうんこう / リエンユンカン
中国、江蘇(こうそ)省北東端、黄海に臨む地級市。連雲、贛楡(かんゆ)、海州(かいしゅう)の3市轄区と、東海(とうかい)、灌雲(かんうん)、灌南(かんなん)の3県を管轄する(2016年時点)。人口510万9900(2012)。1949年、新浦(しんほ)、海州、連雲港などを合併して新海連(しんかいれん)市が設けられ、1961年に現名に改められた。古くは海州と郁洲(いくしゅう)の地であったが、現在の陸地は海中にあり、雲台山(うんたいさん)は黄海上の孤島であった。1194年に黄河(こうが)が淮河(わいが)の流路を奪って南流してから泥砂の堆積が進み、1710年ごろにはほぼ陸地化して雲台山が陸続きになった。
北宋(ほくそう)時代よりおこった淮北地方の製塩業は、明(みん)・清(しん)時代には淮南地方を上回り、河港の海州は塩の集散、積出し港として繁栄した。清末には沭河(じゅつが)の土砂で港が埋まったため、港は東の新浦および大浦に移され、さらに1935年オランダにより牢窰(ろうよう)に新たに築港された。港外にある東西連島が衝立(ついたて)の役割を果たし、天然の良港として重要性が高まった。中国の東西交通の大動脈である隴海(ろうかい)線の起点であり、また運塩河により灌河(かんが)、中山河などと交差して淮陰(わいいん)に至るなど江蘇北部の内陸水運の起点でもある。
中華人民共和国成立後、機械、電子、紡績、食品、化学などの工業が発展した。1984年、改革開放政策の下、沿海対外開放14都市の一つに選ばれた。2006年には、中国最大級の発電規模をもつ田湾原子力発電所が稼働している。海州湾は豊富な漁場であり、エビの養殖が盛ん。淮北塩田は中国の四大塩田の一つであり、市中に横たわる雲台山は著名な雲雰茶(うんふんちゃ)の産地である。また市内の錦屏山(きんぺいさん)には燐(りん)鉱石の埋蔵が豊富で、化学肥料の原料として利用される。蛇紋岩、大理石、水晶などの石材も豊かである。海州区の孔望山(こうぼうさん)には後漢(ごかん)時代の磨崖彫像がある。
[林 和生・編集部 2017年2月16日]