日本大百科全書(ニッポニカ) 「家族解体」の意味・わかりやすい解説
家族解体
かぞくかいたい
family disorganization
家族崩壊に向かう過程を意味し、家族組織化の対概念。家族は動態的に把捉されなければならない。家族解体は、その最終的結果としての家族崩壊(家族という構造の崩壊)とは異なる。家族はなんらかの理由によって解体の方向に向かうが、なんらかの理由によって再組織化されていくのが普通である。家族生活は、それぞれの家族成員が、互いに一つの家族であるという観念や感情によって結ばれ、家族の生活事情に応じた生活目標を共有し、それらの目標達成のため、家族成員相互に期待されるリーダーシップあるいは役割を分担し、継続的に協力して営まれている。しかし、各種の外的・内的要因によってこれらの遂行が妨げられる場合、家族機能に障害が発生し、家族としての統合を維持することが困難になることがある。この状況を家族解体といい、この状況に当面した家族を解体家族という。解体の危機にさらされた家族は再組織化へと向かうが、その意味で家族解体は過程の一部分とみられる。
家族解体をもたらす外的要因としては、災害、戦争、不況による失業などがある。また、内的要因としては、家族成員の病気や事故による身体的・精神的障害、麻薬やアルコール中毒、犯罪、不貞、暴力、過度の浪費、各種の不和などがあげられる。現象的には、夫婦、親子、義理の親子関係の問題として発生する。夫婦間では、死別、別居、離婚、遺棄、蒸発など、また親子間では、家族関係に由来する子供の家出、自殺、児童虐待、さらには親子心中などである。そしてこれらの事態を招くまでに、さまざまな「家族ストレス」の続くのが普通である。また、解体に至らないまでも、慢性的な不和がなかば恒常的に継続して、事実上、家族解体に近い関係もありうる。
[増田光吉・野々山久也]