尋常性瘡(読み)じんじょうせいざそうにきび(その他表記)Acne Vulgaris

家庭医学館 「尋常性瘡」の解説

じんじょうせいざそうにきび【尋常性瘡(にきび) Acne Vulgaris】

毛嚢(もうのう)に皮脂ひし)がたまる
[どんな病気か]
 思春期以降の人の顔面、胸、背中の中心部にある毛嚢(毛包(もうほう)とも呼ばれ、皮膚の中で毛根(もうこん)を包んでいる袋状の組織)と一致した部分に、面皰(めんぽう)、丘疹(きゅうしん)、膿疱(のうほう)、ときに結節(けっせつ)などの、いろいろな種類の皮疹(ひしん)ができるものを尋常性痤瘡にきび)といいます。
 面皰(めんぽう)は、毛孔(もうこう)に皮脂がつまってできる粟粒(あわつぶ)大で円錐形(えんすいけい)の硬い皮疹をいいますが、表面が開いていて黒くみえる黒色面皰(こくしょくめんぽう)(黒にきび)と、表面がふさがっていて白くみえる白色面皰(はくしょくめんぽう)(白にきび)とがあります。面皰のできた毛嚢の中に、皮脂がさらにたまると脂腺しせん)がこわれ、赤い丘疹になります。これが俗にいう「にきび」の状態です。にきびに細菌感染が加わると、膿疱ができ、周囲の赤みが強くなります。膿(うみ)が排出した後は、色素沈着によってしみのように黒くなったり、へこんで瘢痕(はんこん)(傷跡)をつくったりします。
◎いろいろな因子が加わって発症
[原因]
 にきびは、俗にいう脂性(あぶらしょう)の人にできやすいのですが、皮脂の分泌過剰(ぶんぴつかじょう)だけが原因ではありません。皮脂の分泌過剰に、一時的なビタミンの代謝異常(たいしゃいじょう)や自律神経(じりつしんけい)の失調胃腸の不調などが加わることも一因と考えられます。これに、皮膚常在菌(ひふじょうざいきん)や外からの細菌の感染の影響が、皮脂に加わることも原因になります。
 さらに、外部から接触刺激が加わると、にきびはできやすくなり、悪化します。たとえば、前髪がいつも額(ひたい)に触れていると額に、頬(ほお)づえをついていると頬に、よくできます。また、えり飾りや毛皮のえりのついた衣服あごのにきびを悪化させます。これは、接触刺激によって表皮の角化(かくか)が進んで、毛孔がふさがったり、細菌感染がおこりやすくなるためです。
家庭でのケアで予防できる
[治療]
 にきびができやすい体質は遺伝します。にきびに悩まされた親をもつ人は、思春期に入ったら、手当を開始しましょう。丘疹の段階できちんと手当しないと、膿疱ができたり、周囲の皮膚まで炎症がおよび、汚いにきびになります。家庭でのケアが予防になりますので、毎日励行(れいこう)しましょう。
●家庭でのケア
①1日2回石けんで洗顔します。前髪の汚れはにきびを悪化させます。洗髪をこまめにするようにしましょう。市販のにきび用の外用剤(がいようざい)は使用上の注意をよく読んで、皮疹の部分に塗布(とふ)します。にきび用の外用剤には、皮膚を乾燥させる成分が含まれていますので、顔全体につけると異常乾燥をおこし、カサカサになることがあります。
②化粧品は、油成分の多いクリームやファンデーションの使用を中止し、にきびのある人用に処方された化粧水やパウダー、ポイントメーキャップ製品程度の使用にとどめます。
③便秘をすると、にきびが悪化します。便秘しないよう気をつけましょう。
④間食(とくに甘いもの)を慎んで、規則的に食事をとり、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。
⑤前髪を短くするなど、にきびができやすい部分に、よけいな刺激が加わらないように注意しましょう。
⑥にきびはつぶしたり、ひっかいたりすると化膿(かのう)がひどくなり、あとを残しやすいので、汚れた手や指で触れないようにしましょう。
●医師が行なう治療
 症状に応じて抗生物質やビタミンB2の内服を行ないます。外用はナジフロキサシン、イブプロフェンピコノール配合製剤や硫黄(いおう)製剤を使います。家庭での手当をきちんとしないと、十分な治療効果があがりません。
 根気よく治療しますが、思春期を過ぎれば自然に治ります。あまり気にせず、いじりまわさないことです。にきびあとが気になるときは、軽くその部分をはぎとる手術もあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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