歌舞伎狂言。7幕。別名題《花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)》ほか。通称《十六夜清心(いざよいせいしん)》。河竹黙阿弥作。1859年(安政6)2月江戸の市村座初演。配役は清心のちに清吉を4世市川小団次,十六夜(おさよ)を3世岩井粂三郎,白蓮(はくれん)実は大寺庄兵衛を3世関三十郎,求女(もとめ)を13世市村羽左衛門(のちの5世尾上菊五郎),八重垣紋三を初世河原崎権十郎(のちの9世市川団十郎)。一番目大詰に《曾我の対面》を置いて曾我狂言の体裁を残しつつ,八重垣紋三を中心とするお家狂言を仕組むが,重要な筋は講釈種の盗賊鬼坊主清吉の話と,将軍家の御金蔵を破り四千両を盗んで処刑された藤岡藤十郎の一件を題材として,生世話物に仕立ててある。浪人八重垣紋三は大江の家老武太夫によって大江家に召し抱えられるが,武太夫からお家横領の陰謀への荷担を迫られ,これを殺して立ち退く。一方女犯(によぼん)の罪で追放になった極楽寺の僧清心は,廓を抜けて来た遊女十六夜と稲瀬川に身を投げるが死にきれず,通りかかった寺小姓求女を殺して金を奪う。その後盗賊鬼薊清吉となった清心によって大江家の重宝緑丸の短刀が盗まれるが,武太夫を殺して立ち退いた紋三のしわざと疑われて,紋三はのちに切腹することになる。十六夜は俳諧師白蓮に救われていたが,清吉とめぐり合って,夫婦で白蓮をゆすりに来る。ところが白蓮は実は大盗大寺庄兵衛で,幼いとき別れた清吉の兄とわかる。役人に追われる清吉夫婦は,清吉の父が墓守をしている無縁寺に逃れて来るが,清吉は以前殺した求女が十六夜すなわちおさよの弟であること,盗んだ短刀のため親の主筋の紋三が切腹したことを知り,前非を悔いて自害し,おさよも死に,庄兵衛も捕手に囲まれるところで終わる。四建目百本杭の場で十六夜と清心の道行と心中を描き,次に川からはい上がった清心が遊山舟の遊興を見て心が変わり,求女を殺し,それを知るのは〈お月様とおればっかり〉と言って悪に生きることになる変心のドラマを描くが,ここは清元《梅柳中宵月(うめやなぎなかもよいづき)》と七五調のせりふの駆使により情緒的な効果を上げていて,今でも上演される。作者は後年の作《船打込橋間白浪(ふねへうちこむはしまのしらなみ)》でも同じ趣向の芝居を書いている。清吉とおさよの強請(ゆすり)場は江戸生世話狂言の見せ場として重要。清吉らの自害の場には,他所事(よそごと)浄瑠璃として義太夫《恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじよう)》鈴ヶ森の段を使っている。幕末頽廃期歌舞伎狂言の代表作の一つ。
執筆者:松崎 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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