尿沈渣(読み)にょうちんさ

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「尿沈渣」の解説

尿沈渣

基準値

赤血球 :3個以内/1視野

白血球 :2個以内/1視野

上皮細胞少数/1視野

円柱  :0/1視野

尿沈渣とは

 尿の中に出てきた細胞成分や細菌などを顕微鏡で調べる検査。細胞成分には下に示したように、赤血球、白血球、上皮細胞(腎臓尿細管膀胱から脱落したもの)、それらがつまった円柱などがあり、これらが顕微鏡の1視野(400倍)中にどれだけみられるかによって判定する。


腎・尿路の異常を調べる検査です。基準値を超えている場合は再検査をしますが、女性の場合は生理との関係もあるため時間をおいて調べます。

血尿の診断に重要……赤血球

 血尿とは、尿中に多くの赤血球が現れる状態で、じん・尿路の病気の特徴的症候です。現在では、試験紙法で簡単に尿中の潜血反応を調べることができますが、尿沈渣ちんさによって確認しています。

 赤血球は、健康な人でもわずかに尿中に出現(1視野に1~3個)しますが、これ以上出現すると顕微鏡的血尿と診断されます。

 なお、尿中の赤血球の形状の観察から、その赤血球が腎臓の糸球体病変によるものか、非糸球体病変によるものかの鑑別ができます。

 すなわち、糸球体腎炎などの糸球体病変では、赤血球はコブ状、ドーナツ状、金米糖こんぺいとう状のように小型で変形したものが多いのに対して、膀胱ぼうこう炎などの非糸球体病変では、多くは均一の形状を示します。

腎・尿細管の異常を診断……円柱

 円柱は腎・尿細管の鋳型いがたであり、尿細管に病変がある場合に出現します。赤血球円柱、白血球円柱、硝子様円柱など、円柱内に存在する物質により種々の名前がついています。

 検査では、ひとつの検体に対してたくさんの視野をチェックしますが、健康な人ではすべての視野をみても円柱は数個以内のため、数視野に1個でも認められたら、尿細管の異常が疑えます。赤血球円柱では、ネフロン(糸球体と尿細管)での出血を意味して糸球体腎炎や腎梗塞こうそくなどが、白血球円柱では急性腎腎炎などの感染症のほかに、ループス腎炎、間質性腎炎などが疑われます。

特徴的な成分と、疑われる病態

 尿沈渣成分の中には、疾患・病態によって特異的に出現するものがあります。

 卵円形脂肪体はネフローゼ症候群に、封入体細胞はウイルス感染症に、そしてシスチン結晶はシスチン尿症(若年者尿路感染の原因)の特徴的な沈渣成分で、これらの出現でただちに診断が可能になります。

基準値を超えていたら再検査

 いずれも基準値を超えていれば再検査します。例えば、赤血球が1視野に数個のときは、約2週間後に検査します。とくに女性では生理との関係もあり、時間をおいて調べる必要があります。また、1視野に5~20個のときを微少血尿といい、定期的(1~2カ月に1回)な追跡・観察が必要です。

疑われるおもな病気などは

◆赤血球増加→急性糸球体腎炎、腎盂腎炎、腎腫瘍、膀胱腫瘍、尿路結石、膀胱炎など

◆白血球増加→腎盂腎炎、膀胱炎など

◆円 柱  →糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群など

◆上皮細胞 →腎・尿路系の炎症

◆結 晶  →尿酸(腎結石、痛風)、シスチン(シスチン尿症)、チロジン・ロイシン(重症肝障害)など

◆細 菌  →腎・尿路系の細菌感染症など

医師が使う一般用語
「にょうちんさ」

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

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