屋良朝苗(読み)やらちょうびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「屋良朝苗」の意味・わかりやすい解説

屋良朝苗
やらちょうびょう
(1902―1997)

教育者、政治家沖縄読谷(よみたん)村で生まれる。広島高等師範学校卒業後、沖縄県教諭となる。1943年(昭和18)台北師範教授。第二次世界大戦後、沖縄に戻り知念(ちねん)高校校長として自主性と創造性を重んじた教育を実践。1950年(昭和25)沖縄群島政府文教部長に就任し、戦災校舎の復興改善に尽力。1952年沖縄教職員会を組織し初代会長。1960年沖縄県祖国復帰協議会会長。1968年初の琉球(りゅうきゅう)政府主席公選に野党統一候補として出馬当選。返還闘争が激化するなか、米民政府(琉球列島米国民政府)や佐藤栄作首相と折衝を重ね、施政権獲得に全力を傾ける。さらに1972年6月復帰後最初の沖縄県知事選で革新統一候補として出馬、圧勝した。1976年知事退任。平成9年2月14日没。

[小田部雄次]

『『屋良朝苗回顧録』(1977・朝日新聞社)』『『激動八年――屋良朝苗回想録』(1985・沖縄タイムス社)』『喜屋武真栄著『戦後の沖縄を創った人――屋良朝苗伝』(1997・同時代社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「屋良朝苗」の意味・わかりやすい解説

屋良朝苗
やらちょうびょう

[生]1902.12.13. 沖縄,読谷
[没]1997.2.14. 沖縄,那覇
教育者,元沖縄県知事。広島高等師範学校を卒業。沖縄と台湾教師をつとめた。 1946年沖縄に引揚げ,知念高等学校校長。 50年沖縄教職員会会長。 68年革新勢力に推され琉球政府主席に当選。 72年祖国復帰後の初代沖縄県知事にも当選した。長く沖縄県祖国復帰協議会会長をつとめ,沖縄祖国復帰の象徴的存在であった。しかし自衛隊の沖縄への配備問題や国際海洋博覧会で支持母体の組織労働者と民主団体の反発を買うなど,政府と地元住民の板ばさみで苦しんだ。 76年に引退,元老的存在となった。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「屋良朝苗」の解説

屋良朝苗 やら-ちょうびょう

1902-1997 昭和時代の教育者,政治家。
明治35年12月13日生まれ。沖縄県立第一高女教諭,台北師範教授などをへて戦後,知念高校長,沖縄群島政府文教部長を歴任。昭和27年沖縄教職員会を設立して会長となる。祖国復帰運動をつづけ,43年琉球政府主席,47年に復帰後初の沖縄県知事となった。平成9年2月14日死去。94歳。沖縄県出身。広島高師卒。著作に「沖縄の夜明け」「私の歩んだ道」など。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「屋良朝苗」の解説

屋良朝苗
やらちょうびょう

1902.12.13~97.2.14

第2次大戦後の琉球政府主席・沖縄県初代知事。沖縄県出身。広島高等師範卒。沖縄・台湾の師範学校・中学校で教鞭をとり,戦後沖縄で高等学校校長を務める。沖縄群島政府文教部長として教育の復興にあたり,1968年(昭和43)琉球政府の主席公選制実施で当選。沖縄県の祖国復帰に尽力。復帰後,知事に当選。

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旺文社日本史事典 三訂版 「屋良朝苗」の解説

屋良朝苗
やらちょうびょう

1902〜97
教育者・政治家で,復帰後最初の沖縄県知事
沖縄県出身。広島高等師範学校卒業後,教鞭をとり,戦後は沖縄で高校校長を務めた。1960年沖縄県祖国復帰協議会会長となり,'68年初の琉球政府主席公選に当選。'72年,革新統一候補として圧勝し,本土復帰後最初の沖縄県知事となった。

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世界大百科事典(旧版)内の屋良朝苗の言及

【沖縄[県]】より

… 復帰運動の理念は日本国憲法の民主主義と平和主義の精神を異民族支配下の特殊政治状況の中で実現化するところにあり,それは復帰協に結集する沖縄民衆の闘争の蓄積によって支えられていた。68年には屋良朝苗を初の公選主席に当選させるほどに運動は高揚し,72年5月15日の施政権返還というかたちで,日米両政府間における沖縄返還が歴史的事実となったのである。しかし,その時点でアメリカ軍基地の存続が認められ,一部自衛隊の使用に供されて,軍事基地の問題は未解決のまま残されたために,沖縄戦を思いおこし,戦争への危機感をうえつけている(この点を歴史的に第三の琉球処分と評価する視点もある)。…

※「屋良朝苗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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