山口瞳(読み)ヤマグチヒトミ

デジタル大辞泉 「山口瞳」の意味・読み・例文・類語

やまぐち‐ひとみ【山口瞳】

[1926~1995]小説家エッセイスト。東京の生まれ。編集者コピーライターとして活躍した後、本格的な執筆活動に入る。週刊誌に31年間、コラム男性自身」を連載し、都会人の洗練されたタッチで人気を呼ぶ。サラリーマン向けの礼儀作法についての作品も多い。「江分利満えぶりまん氏の優雅な生活」で直木賞受賞。他に「血族」、エッセー草競馬流浪記」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山口瞳」の意味・わかりやすい解説

山口瞳
やまぐちひとみ

[生]1926.11.3. 東京
[没]1995.8.30. 東京
小説家。麻布中学を経て早稲田高等学院に入学したものの在学中に召集される。第2次世界大戦後,鎌倉アカデミアに入学,吉野秀雄,高橋義孝らの師に出会う。出版社に勤務しながら國學院大學を卒業し,1958年からは寿屋 (現サントリー) の宣伝部に入社。そこで開高健,柳原良平らの同僚を得,PR雑誌『洋酒天国』の編集者兼コピーライターとして才能を開花させた。 1961年から雑誌『婦人画報』に『江分利満氏の優雅な生活』を連載,都内の社宅に住む実直さだけがとりえのサラリーマンの日々を,都会人らしい羞恥心アイロニーをもって描き,多くの共感を呼んだ。これにより 1963年直木賞を受賞,以後,作家活動に専念することになった。『マジメ人間』 (1965) ,『少年老い易く』 (1967) ,『なんじゃもんじゃ』 (1971) ,『人殺し』 (1972) などを発表したのち,1979年には母の出生の秘密をテーマにした『血族』で菊池寛賞を受賞。さらに 1983年の『家族 (ファミリー) 』では愛憎相なかばする父親の一生を描いた。一方,雑誌『週刊新潮』に約 30年にわたってエッセー『男性自身』を連載,その都会的で軽妙なセンスが多くの読者をひきつけた。

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百科事典マイペディア 「山口瞳」の意味・わかりやすい解説

山口瞳【やまぐちひとみ】

小説家,随筆家。東京生れ。国学院大卒。鎌倉アカデミーで,歌人吉野秀雄とドイツ文学者高橋義孝を師とする。寿屋(現,サントリー)宣伝部でコピーライターとしての才能を発揮。《婦人画報》に連載の《江分利満氏の優雅な生活》で,第48回直木賞を受賞,作家生活に入る。代表作に《江分利満氏の華麗な生活》,戦中派の自嘲を描いた《マジメ人間》,自身が住む国立市住民の人情を描く《わが町》《居酒屋兆治》,中年作家の暗澹たる内部を描いた《人殺し》などがある。《週刊新潮》連載のエッセー《男性自身》は,20年を越えた。
→関連項目岡本喜八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山口瞳」の意味・わかりやすい解説

山口瞳
やまぐちひとみ
(1926―1995)

小説家、随筆家。東京に生まれる。早稲田(わせだ)大学中退。寿屋(ことぶきや)(現サントリー)で広告制作に携わる。1961年(昭和36)『婦人画報』に連載した『江分利満(えぶりまん)氏の優雅な生活』により直木賞を受賞。63年から死の直前まで『週刊新潮』に連載した『男性自身』は、都会的なセンスに満ちたエッセイで幅広い読者をもつ。おもな作品には、中年作家の暗澹(あんたん)たる内面を描いた長編『人殺し』(1972)、菊池寛賞受賞の書き下ろし長編『血族』(1979)は、母の出自を探った異色のものであり、父を描いた『家族(ファミリー)』(1983)は続編といえる。エッセイ集には『男性自身』(シリーズ)や『世相講談』(1966)、『草競馬流浪(るろう)記』(1984)などがある。

[中石 孝]

『『江分利満氏の優雅な生活』『居酒屋兆治』(新潮文庫)』『『人殺し 上下』『血族』(文春文庫)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山口瞳」の解説

山口瞳 やまぐち-ひとみ

1926-1995 昭和後期-平成時代の小説家。
大正15年11月3日生まれ。寿(ことぶき)屋(現サントリー)宣伝部につとめる。昭和38年「江分利満(えぶりまん)氏の優雅な生活」で直木賞。54年「血族」で菊池寛賞。また38年から「週刊新潮」にエッセイ「男性自身」を連載し,死の直前まで足かけ32年,都会人の日常の哀歓をつづった。平成7年8月30日死去。68歳。東京出身。国学院大卒。
【格言など】美人で頭がよいというのは一種の辛い人生ではあるまいか(「江分利満氏の華麗な生活」)

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