山村暮鳥(読み)ヤマムラボチョウ

デジタル大辞泉 「山村暮鳥」の意味・読み・例文・類語

やまむら‐ぼちょう〔‐ボテウ〕【山村暮鳥】

[1884~1924]詩人群馬の生まれ。本名土田八九十つちだはくじゅう初期の前衛的な詩風から、晩年は平易な表現の人道主義的作風に至った。詩集三人の処女」「聖三稜玻璃せいさんりょうはり」「風は草木にささやいた」「」など。

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精選版 日本国語大辞典 「山村暮鳥」の意味・読み・例文・類語

やまむら‐ぼちょう【山村暮鳥】

  1. 詩人。群馬県出身。本名土田八九十。聖三一神学校卒。「聖三稜玻璃」を発表、斬新な詩風で注目をあびるが、のち人道主義的・牧歌的な傾向を示した。詩集「風は草木にささやいた」「雲」など。明治一七~大正一三年(一八八四‐一九二四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山村暮鳥」の意味・わかりやすい解説

山村暮鳥
やまむらぼちょう
(1884―1924)

詩人。明治17年1月10日、群馬県に生まれる。本名土田八九十(はくじゅう)。東京・築地(つきじ)の聖三一神学校卒業。伝道師として東北各地を放浪のかたわら、前田林外らの『白百合(ゆり)』に木暮流星の筆名で短歌を投稿、創作活動を始め、1910年(明治43)人見東明(ひとみとうめい)らの自由詩社に参加、機関誌『自然と印象』に『航海の前夜』その他を発表する。以後『文章世界』『創作』『早稲田(わせだ)文学』などを舞台に、精力的に詩作を続けた。処女詩集『三人の処女』(1913)を刊行後、萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)、室生犀星(むろうさいせい)らと人魚詩社(1914)をおこし、『卓上噴水』(1915)を創刊するなど、文学と信仰のはざまを大きく揺れ動きながらも、生の苦悩と覚醒(かくせい)を基調とした独自の詩風を確立した。おもな詩集にシュールな詩風で知られる『聖三稜玻璃(せいさんりょうはり)』(1915)、「人間」キリストを主題とした『風は草木にささやいた』(1918)、『梢(こずえ)の巣にて』(1921)のほか、『雲』(1925)、遺稿詩集『月夜の牡丹(ぼたん)』(1926)などがある。小説、童話なども手がけた。大正13年12月8日没。

[原 子朗]

『『山村暮鳥全集』全二巻(1961、62・弥生書房)』『『山村暮鳥全詩集』(1976・弥生書房)』『『山村暮鳥』(『近代文学研究叢書23』所収・1965・昭和女子大学)』『和田義昭著『山村暮鳥と萩原朔太郎』(1976・笠間書院)』

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朝日日本歴史人物事典 「山村暮鳥」の解説

山村暮鳥

没年:大正13.12.8(1924)
生年:明治17.1.10(1884)
明治大正時代の詩人,伝道師。木暮久七,志村シャウの長男。群馬県西群馬郡棟高村に生まれる。本名土田八九十(旧姓志村,木暮)。複雑な家庭だったらしく,自伝で不幸な生い立ちを述懐している。小さいころから様々な職を転々とし,16歳のとき小学校の代用教員となり,同時に前橋の牧師チャッペルについて英語を学ぶ。明治35(1902)年,洗礼を受け,36年,築地の聖三一神学校に入学,兵役で満州(中国東北部)に出征したのち,41年卒業。聖公会伝道師として,秋田,湯沢,仙台,水戸などを歴任する。初めは木暮流星の名で短歌の投稿をするが,43年,人見東明らの結成した自由詩社に参加,山村暮鳥と改名,詩作を専らとする。大正2(1913)年,『三人の処女』を出版。4年,『聖三稜玻璃』刊,内容が詩壇に波紋を投げかけ,毀誉褒貶あい半ばする評価を受けた。言葉遊びとけなす者,象徴詩を読み取る者,意味不明と匙を投げる者などであった。時代に先んじたダダイスム的要素がみられるが,深い意味がどこまであったかは疑問である。しかし7年刊の『風は草木にささやいた』は,ヒューマニズム溢れる詩集で,愛読書のボードレール的な面よりは,内容的にはフランシス・ジャムに近い。この年,喀血して伝道師を休み,茨城県磯浜に療養生活を送ることになる。この間も童話の執筆,1300行からなる長編詩『荘厳なる苦悩者の頌栄』(1920),自作のなかから会心の作87篇を集めた『穀粒』(1921)などがあるが,詩集『雲』の編纂途中で没した。晩年の詩は穏やかな日常を素朴に歌っている。

(及川茂)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

20世紀日本人名事典 「山村暮鳥」の解説

山村 暮鳥
ヤマムラ ボチョウ

大正期の詩人,伝道師



生年
明治17(1884)年1月10日

没年
大正13(1924)年12月8日

出生地
群馬県西群馬郡棟高村(現・群馬町)

本名
土田 八九十(ツチダ ハクジュウ)

旧姓(旧名)
木暮

別名
初号=木暮 流星

学歴〔年〕
聖三一神学校〔明治41年〕卒

経歴
明治35年洗礼を受ける。41年聖三一神学校卒業後、聖公会伝道師として各地に転任。37年「白百合」に短歌を投稿し、40年雑誌「南北」を創刊。42年文芸雑誌「北斗」の創刊に加わり、43年自由詩社同人となって詩壇に出る。大正2年処女詩集「三人の処女」を刊行、また3年萩原朔太郎、室生犀星とともに人魚詩社を創立し、4年機関誌「卓上噴水」を創刊。同年「聖三稜玻璃」、7年には「風は草木にささやいた」などの詩集を刊行した。他に詩集「梢の巣にて」「穀粒」、童話「ちるちる・みちる」「鉄の靴」などがある。また没後の14年「雲」が刊行された。「山村暮鳥全集」(全2巻 弥生書房)がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「山村暮鳥」の意味・わかりやすい解説

山村暮鳥 (やまむらぼちょう)
生没年:1884-1924(明治17-大正13)

詩人。群馬県生れ。本名土田八九十。繭の仲買商だった父が事業に失敗,小作農としての貧窮の生活を幼少年期に過ごし,工員ほか多くの職を転々,16歳のときに年齢をいつわって小学校の代用教員などもした。1902年6月前橋聖マッテア教会にて受洗。翌03年東京築地の聖三一神学校に入学し08年卒業。以後秋田県横手をはじめ湯沢,仙台,水戸,福島県平,ふたたび水戸と聖公会伝道師として各地に転任。18年秋結核のため喀血,翌年より伝道師の職を休職,終焉の地茨城県磯浜にその晩期を過ごすこととなる。その詩作活動は処女詩集《三人の処女》(1913)を経て《聖三稜玻璃(せいさんりようはり)》(1915)に至り,その清新異風の詩調は近代詩史に一紀元を画すものとみられたが,第3詩集《風は草木にささやいた》(1918)では人道主義的作風に転じ,さらに病没直後に刊行の詩集《雲》(1925)に至っては枯淡な東洋的詩境へと転じていった。詩作のほか童話,童謡の制作も逸することはできぬが,その生涯をつらぬく文学と宗教,さらには伝統的心性と信仰をめぐる二元葛藤の相は,近代詩史上にも稀なるものとして注目される。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「山村暮鳥」の意味・わかりやすい解説

山村暮鳥【やまむらぼちょう】

詩人。本名土田八九十。群馬県生れ。聖三一神学校卒。以後聖公会伝道師として各地に転任。初め短歌を作ったが,のち詩に転じ,1913年詩集《三人の処女》を出して認められ,萩原朔太郎室生犀星と人魚詩社を興す。このころから鋭角的で斬新な詩風の作品を書き,それらは1915年の《聖三稜玻璃(せいさんりょうはり)》に結晶し,朔太郎らに大きな影響を与えた。しかし自身は人道主義的作風に転じ,《風は草木にささやいた》《雲》をまとめた。日本近代史に類例のない軌跡を描いている。
→関連項目感情(雑誌)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山村暮鳥」の解説

山村暮鳥 やまむら-ぼちょう

1884-1924 明治-大正時代の詩人。
明治17年1月10日生まれ。聖三一神学校卒業後,伝道しながら詩をつくり,大正2年第1詩集「三人の処女」を出版。4年の「聖三稜玻璃(せいさんりょうはり)」は斬新さで詩壇の話題となる。7年「風は草木にささやいた」で人道主義的詩風にたち,晩年は枯淡の境地にいたった。童話,童謡もかいた。大正13年12月8日死去。41歳。群馬県出身。本名は土田八九十(はくじゅう)。
【格言など】芸術のない生活はたえられない。生活のない芸術もたえられない(「雲」)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山村暮鳥」の意味・わかりやすい解説

山村暮鳥
やまむらぼちょう

[生]1884.1.10. 群馬,棟高
[没]1924.12.8. 茨城,磯浜
詩人。本名,土田八九十。 1908年聖三一神学校卒業。キリスト教牧師となり,かたわら,北原白秋,室生犀星,萩原朔太郎を知り,『三人の処女』 (1913) ,『聖三稜玻璃』 (15) などの詩集に直観的で難解な象徴詩風を展開。その後次第に平明な牧歌的,人道主義的作風に転じ,『風は草木にささやいた』 (18) ,『雲』 (25) などの詩集を刊行した。

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367日誕生日大事典 「山村暮鳥」の解説

山村 暮鳥 (やまむら ぼちょう)

生年月日:1884年1月10日
大正時代の詩人;伝道師
1924年没

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