中国、湖南(こなん)省北東部の地級市。人口563万3000(2014)。3市轄区、4県を管轄し、汨羅(べきら)など2県級市の管轄代行を行う(2016年時点)。両湖(りょうこ)平原南部の洞庭湖(どうていこ)の湖岸に位置し、市の北方の城陵磯(じょうりょうき)で湖水は長江(ちょうこう)(揚子江(ようすこう))に流入している。隋(ずい)の岳州、元の岳州路、明(みん)、清(しん)の岳州府治で、1961年岳陽県の一部を割いて市制施行、翌1962年ふたたび同県に編入されたが、1975年市に復した。
湖南省北部の水陸交通の要地で、物流業が盛んである。省唯一の長江沿岸の港湾で、1996年国際貿易港として開放された。京広線に加え、京広高速鉄道(2012年開通)、京港澳(けいこうおう)高速道路(北京(ペキン)―香港(ホンコン)―マカオ)が通る。製紙、機械、建築材料、石油化学工業などの工場の立地する工業都市である。周辺地区では米、ワタ、茶を産出し、魚の養殖や養豚も盛んである。市西門の城楼「岳陽楼」沖合いの洞庭湖中にある君山(くんざん)は史跡で、茶の産地としても有名である。
[河野通博・編集部 2016年12月12日]
中国,湖南省北東部,長江(揚子江)の南岸,京広鉄道(北京~広州)沿いにあり,洞庭湖に臨む新興工業都市。人口91万(2000)。1961年,岳陽県から分離して設置された。62年撤廃されたが75年再び市が設けられた。臨湘市など2市,4県を管轄し,湖南省北部における水陸一貫運輸の要衝でもある。鉄鋼,機械,建材,化学肥料などの工業が発達する。市の西門の城楼は3層からなり岳陽楼と呼ばれる。城楼からは洞庭湖,君山を望むことができる。唐代に建てられ,宋の滕子京によって再建された。范仲淹の〈岳陽楼記〉で有名である。岳陽県は古代の麋子(びし)国にあたるといわれ,漢代には下雋(かせん)県に属した。南北朝時代巴陵県がおかれ,巴陵郡治であった。隋代以後岳州と呼ばれ,明以後岳州府治となった。1913年岳陽県と改められる。湖南全省の水路を扼(やく)する交通上の要地で,古来軍事的にも重視された。水稲二期作の盛んな水田地帯だが,丘陵部では茶が栽培され,〈君山茶〉〈北港茶〉の名で知られる。
執筆者:林 和生
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