島田正吾(読み)しまだしょうご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「島田正吾」の意味・わかりやすい解説

島田正吾
しまだしょうご
(1905―2004)

俳優。横浜市保土ケ谷(ほどがや)生まれ。本名服部(はっとり)喜久太郎。大阪の明星商業卒業後の1923年(大正12)新国劇沢田正二郎門下に入り、たちまち頭角を現して1927年(昭和2)には幹部に昇進。1929年3月の沢田の急逝後その後継者に抜擢(ばってき)され、同年『白野弁十郎(しらのべんじゅうろう)』『沓掛(くつかけ)時次郎』を演じて好評を博し、辰巳(たつみ)柳太郎とともに新国劇の中心となった。『関(せき)の弥太(やた)っぺ』『瞼(まぶた)の母』などの股旅(またたび)物を得意とする一方、『霧の音』『ビルマ竪琴(たてごと)』などの現代劇にも、独特の台詞(せりふ)回しによる渋味のある重厚な芸風を示してきたが、1987年、新国劇創立70周年を契機に劇団は倒産消滅。盟友辰巳も1989年(平成1)没した。その後は一人芝居を続けるほか、テレビ、歌舞伎の舞台でも活躍した。毎日演劇賞(1958)、芸術選奨文部大臣賞(1974)、勲四等旭日小綬章(きょくじつしょうじゅしょう)(1976)、フランス政府よりフランス芸術文化勲章シュバリエ章(1992)、菊池寛賞(同)、東京都文化賞(1998)、真山青果大賞(同)などを受けた。

藤田 洋]

『島田正吾著『芝居ひとすじ』(1996・岩波書店)』『島田正吾著『ふり蛙 新国劇七十年あれこれ』(朝日文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「島田正吾」の意味・わかりやすい解説

島田正吾
しまだしょうご

[生]1905.12.13. 神奈川,横浜
[没]2004.11.26. 東京,目黒
俳優。本名服部喜久太郎。 1923年新国劇に入る。沢田正二郎の急逝後,後進で対照的な芸風の辰巳柳太郎と協力して新国劇をもりたてた。リアルで堅実な演技で,また旅物を得意とし,『瞼の母』の忠太郎や『殺陣師 (たてし) 段平』などあたり役は多い。 1987年の解散後は広く商業演劇で活躍する一方,1991年には『シラノ・ド・ベルジュラック』の翻案一人芝居である『白野弁十郎』をパリで公演。 1969年紫綬褒章,1974年芸術選奨文部大臣賞,1992年フランスのレジオン・ドヌール勲章を受けた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「島田正吾」の解説

島田正吾 しまだ-しょうご

1905-2004 昭和-平成時代の俳優。
明治38年12月13日生まれ。大正12年沢田正二郎の内弟子となり,師の没後辰巳柳太郎とともに新国劇の看板スターとなった。剣劇のほか「霧の音」「ビルマの竪琴」のような新作も手がけ,映画にも出演。昭和62年新国劇解散後も舞台,テレビで活躍。平成3年から一人芝居を上演。4年菊池寛賞,10年東京都文化賞。平成16年11月26日死去。98歳。神奈川県出身。明星商業卒。本名は服部喜久太郎。

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世界大百科事典(旧版)内の島田正吾の言及

【新国劇】より

…24年に金井,田中らが沢田の相手役として活躍していた女優の久松喜世子(きよこ)(1886‐1977)と対立して退団,翌年には渡瀬淳子が離れたが,高田保脚色《白野弁十郎》(《シラノ・ド・ベルジュラック》の翻案・脚色),真山青果《桃中軒雲右衛門(とうちゆうけんくもえもん)》などで大衆劇の新境地を開き,前進を続けた。しかし,29年3月4日に沢田が急死,劇団は一時,危機に見舞われるが,若い島田正吾(1905‐ )と辰巳柳太郎(たつみりゆうたろう)(1905‐89)の抜擢が功を奏して人気を呼び,引き続き劇界に確固たる地位を占めた。第2次世界大戦中は吉川英治原作の《宮本武蔵》などで切り抜け,戦後は北条秀司(ほうじようひでじ)(1902‐96)の《王将》《霧の音》などの名作を得て人気を保ってきたが,創立50周年を迎えたころから,大幹部の島田,辰巳の高齢化,若手の脱退で衰退にむかい,79年9月,株式会社新国劇は倒産。…

【関の弥太っぺ】より

…1929年(昭和4),総帥の沢田正二郎が急死して危機にあった新国劇のために長谷川伸が書き下ろした戯曲で,8月,帝国劇場で初演され好評を博した。主人公の関の弥太郎は,のちに島田正吾の当り役になった。長谷川伸に心酔していた講釈師服部伸(1880‐1974。…

※「島田正吾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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