鞍馬天狗(読み)くらまてんぐ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「鞍馬天狗」の解説

鞍馬天狗
くらまてんぐ

曲名。切能物 (→尾能 ) 。宮増作と伝えられる。各流現行。鞍馬の奥の僧正ヶ谷に住む山伏 (前ジテ) が鞍馬の花見をしようと現れる。一方,西谷の正から能力 (アイ) を使いとして招きを受けた東谷の僧正 (ワキ) は,稚児従僧を伴って花見に興じるがその席へ山伏が乱入,一行は沙那王 (子方) だけ残して退散する。山伏はこの稚児を憐れみ,花の名所を案内して,みずから大天狗であることを名のり,翌日兵法を授けることを約して,雲を踏んで飛去る (中入り) 。間狂言に木葉天狗が登場したあと,沙那王がなぎなたを肩に登場。大ベシ囃子で大天狗 (後ジテ〈大べし見面,赤頭,大兜巾,裕狩衣,半切〉) が羽うちわを手に現れ,兵法の秘伝を授け,武運の守護を約し,消え去る。小書 (こがき) に,白頭,白頭別習 (宝生) ,素働 (観世) などがある。

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精選版 日本国語大辞典「鞍馬天狗」の解説

くらま‐てんぐ【鞍馬天狗】

[一] 京都鞍馬の僧正ケ谷に住んでいたという天狗。牛若丸に兵法を伝授したという言い伝えがある。
[二] 謡曲五番目物。各流。宮増作か。鞍馬山の東谷の僧が牛若丸や平家の稚児を連れて西谷に花見に行き、牛若丸一人を残して帰る。山伏はこれをあわれんで、牛若丸を花の名所に案内し、自分はこの山の大天狗で明日兵法を授けようといって去る。翌日牛若丸が待っていると大天狗が現われ、兵法を授ける。
[三] 小説。大仏次郎作。大正一三年(一九二四)から昭和四〇年(一九六五)までに四六編書かれた。幕末の京都を背景に、新撰組を相手に勤王志士、鞍馬天狗が神出鬼没の活躍をする。映画、演劇、テレビなどに多くとりあげられた。

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デジタル大辞泉「鞍馬天狗」の解説

くらまてんぐ【鞍馬天狗】[謡曲・書名]

謡曲。五番目物鞍馬山の大天狗が源氏再興を目ざす牛若丸に兵法を授け、将来の助力を約束する。
大仏次郎(おさらぎじろう)の小説。大正13年(1924)から昭和40年(1965)にかけて四十数編を連作。幕末の京都を背景に、勤王の志士鞍馬天狗が、新撰組を相手に活躍する。

くらま‐てんぐ【鞍馬天狗】

昔、鞍馬の僧正ヶ谷に住んでいたという天狗。
[補説]謡曲名・書名別項。→鞍馬天狗

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus「鞍馬天狗」の解説

鞍馬天狗 くらまてんぐ

大仏(おさらぎ)次郎の連作時代小説の主人公。
本名は不明,仮名倉田典膳,海野雄吉など。「角兵衛獅子(じし)」「天狗廻状」など多数の作品に登場し,薩長をたすけて倒幕運動に活躍。嵐寛寿郎主演で数おおく映画化され,人気をあつめた。

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デジタル大辞泉プラス「鞍馬天狗」の解説

鞍馬天狗〔テレビドラマ〕

日本のテレビドラマ。放映はテレビ東京系列(1990年10月~1991年9月)。全51回。時代劇原作:大仏次郎。脚本:田村多津夫ほか。出演:目黒祐樹、高橋悦史、谷口公洋ほか。

鞍馬天狗〔日本映画〕

1959年公開の日本映画。監督:マキノ雅弘、原作:大仏次郎。出演:東千代之美空ひばり、丘さとみ、月形竜之介など。

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世界大百科事典 第2版「鞍馬天狗」の解説

くらまてんぐ【鞍馬天狗】

大仏次郎の連作時代小説で,短編《鬼面の老女》(1924)から《西海道中記》(1959)まで36編の作品をさす。いずれも鞍馬天狗を主人公としている。《御用盗異聞》《角兵衛獅子》《天狗廻状》《宗十郎頭巾》《江戸日記》《のたより》などがとくに名高い。作者はこの主人公を謡曲《鞍馬天狗》から思いついて,不死身の超人的な武士にふさわしい命名をした。倉田典膳,館岡弥吉郎,海野雄吉などの仮名もあるが,本名は不明である。

くらまてんぐ【鞍馬天狗】

能の曲名。五番目物宮増(みやます)作。シテは大天狗。鞍馬山の僧(ワキ)が大勢の稚児(子方)を連れて花見に出かける。小舞などに興じていると,その席にぶしつけな山伏(前ジテ)が来て座り込むので,僧たちは立ち去るが,1人だけ居残った稚児が山伏に親しげにことばをかける。それが源義朝の遺児牛若だった。平家の稚児たちにのけ者にされていることに同情した山伏は,牛若と連れ立って山々の桜を見て歩くが,自分は実はこの山の大天狗だと明かし,明日の再会を約束して僧正ヶ谷へ立ち去る。

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世界大百科事典内の鞍馬天狗の言及

【嵐寛寿郎】より

…片岡千恵蔵と共にマキノプロに入社。当時の名まえは嵐長三郎(ほぼ1年後,独立して寛寿郎を名のる)で,1927年《鞍馬天狗異聞・角兵衛獅子》でデビュー。黒紋付の着流しと三角覆面の鞍馬天狗=〈天狗のおじさん〉が誕生した。…

【大仏次郎】より

…1917年,高校在学中に《一高ロマンス》を出版,大学卒業前後にロマン・ロランの反戦文学作品を3冊翻訳出版するなど,青年時代から文学活動を始めた。関東大震災を契機として勤務先の外務省を退いて作家生活に入り,24年に大衆文芸誌《ポケット》に連載を始めた《鞍馬天狗》によって認められた。このあと,《照る日くもる日》(1926‐27),《赤穂浪士》(1927‐28),《ごろつき船》などの新聞小説が続いた。…

※「鞍馬天狗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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