小説家。石川県の生まれ。旧制金沢二中、金沢商業学校中退。放浪生活のなかから小説『地を超ゆる』(1917)を執筆、歌人で評論家の暁烏敏(あけがらすはや)の紹介で公表され、京都『中外日報』記者となる。1918年(大正7)『地上』第一部を脱稿、翌年生田長江(いくたちょうこう)の推挙で新潮社から刊行された。天才肌の主人公が社会に反抗し、恋愛する姿を描き、理想主義的な青年の共感を得て、異常な売れ行きを示す。しかし、続刊された第二部、第三部では概念的になり、未完に終わる。22年欧州旅行後は奇矯な言動が目だち、不遇のうちに精神科病院で没した。ほかに短編集『大望』(1920)、評論集『勝利を前にして』(1922)がある。
[山田俊治]
『『地上――地に潜むもの』(1973・季節社)』
小説家。石川県美川町生れ。回漕業を営んでいた生家の没落により金沢へ移り,県立金沢二中,明治学院普通部を転々としたのち,県立金沢商業を中退。1919年ひそかに書き上げた小説《地上》第1部を新潮社から出版したところ,年少の天才として世評を呼び,一躍流行作家となった。引き続き第2部(1920),第3部(1921),第4部(1922)が出版されたが,その内容は巻を追って低下し,名声も衰えた。《地上》第1部は,彼が少年時代を過ごした母の実家(貸座敷業)での見聞を描いたもので,売春婦の悲惨な生活と,彼女たちに寄せる主人公の少年の人道主義的な同情が,若い世代の共感を呼んだが,一方,名声の高まるにつれて,作者自身の実生活における傲慢な言動が,周囲の反感を買い,しだいに支持者を失った。23年4月,婦女暴行事件によって社会的非難を受け,まもなく早発性痴呆(早発性認知症)という診断のもとに西巣鴨の保養院に入院,その後文学活動を続けることなく没した。
執筆者:杉森 久英
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大正期の小説家
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