工作測定(読み)こうさくそくてい

改訂新版 世界大百科事典 「工作測定」の意味・わかりやすい解説

工作測定 (こうさくそくてい)

機械部品の寸法形状および面のでこぼこなどが指定どおりにできているか否か,加工中または加工後に測定あるいは検査することをいう。精密測定ということもある。一品一品機械を作っていたときは,機械部品,例えば軸と穴とを互いに現物で合うように作って組み立てていた。生産量が増大すると,分業によって,異なった工程で,かつ異なった時刻,作業者によって,機械部品を製作し,任意に組み合わせて作るようになる。任意に組み合わせても機械として十分な機能を発揮するためには,機械部品の互換性がなければならない。機械工作をするに当たって,機械部品の材料,寸法と許しうる寸法偏差,形状とその公差などが指定されている工作図面が与えられる。それに従って,所定の材料を選定し,適した工作機械で加工する。図面に指定された許容限界寸法以内にあるように削るためには測定しなければわからない。運転中の汎用(はんよう)旋盤を止め,工作物をマイクロメーターで測定し,削り代を推定して切込量の設定を行い,加工する。加工が終了したとき,工作物を再び測定し,図面どおりにできているかどうかを検査する。工作測定は機械工作と密接に結びついて工作技術を支えている。機械工作に精密な測定技術が作用して,互換性が保たれるのであって,工作測定は工作物の品質維持の担い手ということができる。

 工作物の精度は寸法および形の偏差の大きさならびに表面あらさの大きさによって評価される。工作物の寸法偏差は工作機械の位置決め精度によって決まる。その位置決め精度に関係するものに穴位置の座標や工作物の対象性などの位置偏差がある。形の偏差の中には,直線形体の幾何学的に正しい直線からの狂いの大きさを示す真直度,円の狂いの大きさを示す真円度をはじめ,平面度,円筒度,線の輪郭度,面の輪郭度,ならびに基準として与える一つの形体からの狂いを示す平行度,直角度,傾斜度などがある。これらの偏差は工作機械の基準面の精度,直線運動の精度,主軸の回転精度および軸の交差角の精度などが関係する。表面あらさには主として工具類の性能と工作手順などが関係する。品質のよい工作物を作りだすために,工作物そのものの測定のほかに,工作機械の幾何学的関係,加工に用いる工具の形状・寸法,位置決め,固定および案内に用いるジグおよび各種ゲージなどの測定,検査も広く行われる。工作物の寸法および位置を示す座標は長さの測定によって求めることができ,形は長さおよび角度の測定から,表面あらさは微小な変位すなわち長さの測定から求めることができる。角度は角度の測定のほかに,長さと長さの比から求めることも多い。したがって,長さの正確な測定が工作測定の中心となっている。

 測定はある量を基準とする量と比較し,数値または符号を用いて表すことをいい,検査とは品物をなんらかの方法で試験した結果を判定基準と比較して,個々の品物の良品,不良品の判定を下すことをいう。工作物の検査では,寸法の測定値を限界値と比較するか,または必ずしも数値は求まらなくても限界ゲージによって一定の限界内にあるかどうかを確かめている。長さの測定には,測長器それ自身に内蔵している標準尺などの標準器と比較して長さを読み取る方法と,ブロックゲージなどの外部の標準器の長さと比較測長器を用いて比較して長さを求める方法とに大別することができる。前者の方法による測定機器には,ノギス,マイクロメーター,測長器,工具顕微鏡,三次元座標測定機などがあり,後者の方法に属する比較測長器には,ダイヤルゲージ,指針測微器などの機械的比較測長器,空気マイクロメーター,電気マイクロメーター,光学的測微器,光電式測微器などがある。能率よく品質のよい工作物を作るために,工作機械にディジタルスケールシステムや測微器類を組み込んで行う自動測定も広く行われている。加工中あるいは加工直後に工作物の寸法を測定し,それを電気的量に変換し,工作機械をフィードバック制御している。また工作物をいくつかの寸法区分に自動選別したり,自動的に合否判定するものなどもある。コンピューターを利用して測定を自動化した測定機器,例えば自動三次元座標測定機が普及しつつある。

 形の測定には基準形状からの偏差を比較測長器を用いて求める方法が広く行われている。真円度測定器,真直度測定器,輪郭形状測定器などは,対象とする形を便利にかつ精度高く測定できるようにまとめられた測定器である。表面あらさの測定には,触針電気拡大式表面あらさ測定器が基本的なものとして多く用いられている。このほか光学的に表面あらさを測定するものとしては,おもに光波干渉縞を利用する方法と光切断法が用いられている。面のでこぼこの検査や管理に用いるものに,電気容量法,光ファイバーなどによる光反射を用いたものがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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