フィードバック(その他表記)feedback

翻訳|feedback

デジタル大辞泉 「フィードバック」の意味・読み・例文・類語

フィードバック(feedback)

[名](スル)
ある機構で、結果を原因側に戻すことで原因側を調節すること。電気回路では出力による入力の自動調整機能、生体では代謝内分泌の自己調節機能など。
物事への反応や結果をみて、改良・調整を加えること。
顧客や視聴者など製品・サービスの利用者からの反応・意見・評価。また、そうした情報を関係者に伝えること。「現場からのフィードバックを設計に反映させる」「アンケートの結果を担当部門にフィードバックする」
[類語]影響反応刺激煽り作用響く差し響く跳ね返る祟る災いする反響反映反動反作用波紋余波皺寄せとばっちり巻き添えそばづえ手応え歯応え物議を醸すインパクトリアクションレスポンス

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精選版 日本国語大辞典 「フィードバック」の意味・読み・例文・類語

フィード‐バック

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] feedback )
  2. 電気回路で出力したものの一部を入力の側にもどすこと。帰還。
  3. 社会学・心理学・教育学の用語。ある方式を補強修正するため、一定の行動を行なった後、その結果の反応をみて行動を変化させること。転じて、動作や行為などにおいて、その結果を原因にてらしあわせ、原因を調整していくこと。〔原子と椎茸と(1954)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「フィードバック」の意味・わかりやすい解説

フィードバック
feedback

本来は制御工学通信工学の用語。帰還ともいう。N.ウィーナーサイバネティックスの中心概念の一つとして取り上げてから一般的にも使用されるようになった。例えば入力をある割合で増幅し出力する増幅器のように,入力によって出力が決まるシステムで,出力(の一部,あるいは出力に関連して決まる作用)を入力に加え,出力に影響を与えることをいう。またこのようにすることをフィードバックをかける,このようになっていることをフィードバックがかかっているなどという。

 フィードバックをかけるのは,それによってそのシステムの特性を変更するためである。例えば増幅器ではフィードバックをかけることで,広い周波数帯域にわたって一様に増幅することができる。また増幅回路に一度生じた振動を継続発展させるようにフィードバックをかけることによって発振回路にすることもできる。

 自動制御系では,実際の制御量(出力)を目標値(制御系の入力,制御量の望ましい値)と等しくするため,制御量を目標値側にもどし,両者の差が0になるように,制御装置が制御対象に働きかけるフィードバック制御が使われている。

 アナログ計算機では演算増幅器のフィードバック経路に適当なインピーダンスを挿入して,積分器その他必要な演算要素を実現している。このようにするとフィードバック経路に挿入した素子の入出力特性の,入力と出力とが入れ代わった逆の特性がよい近似で実現できる。

 自然現象,生命現象,社会現象などにもフィードバック現象が多数ある。例えば燃え出すと温度が上がりさらに燃えやすくなるとか,逆に燃えると酸素を消費してしまうので燃えにくくなるなどである。前者のように現象をさらに助長する場合を正のフィードバック(正帰還),後者のように現象の発展を抑制する場合を負のフィードバック(負帰還)という(前述の例で,増幅器は負のフィードバック,発振器とするのは正のフィードバックの例である)。

 生体においては,ある活動レベルで恒常性すなわちホメオスタシスを保つために非常に多くの正および負のフィードバックが組み込まれており,分子レベルにおけるアロステリック効果などが代表的な例である。しかし,なかにはショック症状のように好ましくない症状を助長する正のフィードバックも存在する。また生体の外部にフィードバック経路を付加して,生体を望ましい状態に維持するのを助けてやることもできる。
執筆者:

フィードバックの概念は,サイバネティックスの社会科学への応用ということから,経済学,社会学,政治学などにも用いられるようになり,モデルの説明のほか,広義には政策の結果をみて政策を変更するなどの場合にも用いられている。また人間のコミュニケーションを説明する概念の一つともなっており,例えばオズグッドC.E.OsgoodとシビオクT.A.Sebeokは,コミュニケーションとは話し手が聞き手に一方的に情報を伝達する過程ではなく,むしろ話し手の伝える情報が種々の要因によって規制され,システムとしての安定性が維持されるという観点から,話し手が自分自身の音声を聞きながら話の内容を修正していく〈個人内フィードバック〉と,聞き手の身ぶりや返答を確かめながら修正していく〈個人間フィードバック〉という概念を導入している。個人間の会話ではこれらのフィードバックが常に機能しコミュニケーション・システムを制御しているが,他方,高度な機械技術を使って不特定多数の大衆に情報を同時に伝達するマス・コミュニケーションにおいては受け手からのフィードバックが少なく,伝達が一方的になる傾向がみられる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィードバック」の意味・わかりやすい解説

フィードバック
ふぃーどばっく
feedback

制御系などで、系の出力の一部を入力に戻して出力を制御すること。帰還ともいう。フィードバックの方法には単一ループによるもののほかに、多くのループを用いる多重型や、電気特性が一様に分布したループによる分布型がある。

 出力の一部を入力に戻すとき、その方向(極性)は入力と同じか逆方向に加えるが、それを正(ポジティブ)または負(ネガティブ)のフィードバックとよぶ。系に正のフィードバックを加えると、外部からみた利得は増大する。負のフィードバックを加えると、外部からみた利得は減少するが、系の特性は改善される。正のフィードバックは発振回路や跳躍回路のほか分布帰還型レーザーに、負のフィードバックは広帯域増幅回路や自動制御システムに用いられる。

[岩田倫典]

社会科学・社会工学への応用

フィードバックとは、ある原因から生み出された結果がその原因に反作用をもたらすことによって、原因自体が自動的に調整され、より望ましい結果が導かれる過程をいう。そして、この過程をシステム化した状態、つまり入力した指令(原因)がある回路を通して伝達されて一定の出力(結果)をもたらすと、その効果がただちに別な回路を通して制御装置に伝えられて指令そのものを調整するという過程を反復的、連続的に保障している機構をフィードバック・システムという。フィードバックはもともと電気工学上の原理について用いられてきた用語だが、制御とともにサイバネティックスの基本概念の一つともされ、現在では広く社会科学、社会工学においても社会過程の分析や設計にこの概念が適用されている。社会や組織のなかの中枢機関で、ある意思決定が行われ、それが執行に移される過程で、そのなかの関係諸部門や諸階層からその決定の内容や実施方法に関する意見や提案が中枢機関に送られ、決定の実効性をより高めるという、意思決定過程におけるボトム・アップbottom-upとか参加的意思決定の考え方は、社会過程におけるフィードバックの概念と深く関連している。この過程の自動化を図ろうとする志向は、一方では社会内部、組織内部での民主化、他方では社会管理、組織管理の効率化への関心と結び付いている。

[石川晃弘]

『N・ウィーナー著、池原止戈夫他訳『サイバネティックス』第二版(1962・岩波書店)』『J・アネット著、増山英太郎他訳『フィードバックと人間行動』復刊版(『現代の心理学2』1985・岩崎学術出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィードバック」の意味・わかりやすい解説

フィードバック
feedback

系の出力側の一部を入力側に戻すこと。帰還ともいう。 1934年,H.S.ブラックにより増幅器についてその原理が述べられた。のちにその負帰還の安定性の理論が,ハイファイアンプ自動制御系,人間工学などに広く応用されるようになった。特にフィードバック制御は自動制御の基本である。図はフィードバック増幅器を示し,ここで AV'0/V0トランジスタなどの能動素子を含む増幅回路の増幅度,βを抵抗,容量,インダクタンスなどの受動素子だけから成るフィードバック回路の帰還率とし,全体の増幅度 V'0/VSA' とすると,A'=A/(1-Aβ) となる。 |1-Aβ|<1 のときを正帰還といい,A'>A となり,増幅度は帰還回路によって増大する。 |1-Aβ|=0 のとき A' は無限大となり,これは回路が発振状態にあることに等しい。 |1-Aβ|>1 のときを負帰還といい,A'<A となり,増幅度は減少する。このとき |Aβ|≫1 (この条件は普通は満足される) であれば A'≒-1/β となる。βは安定な回路素子のみから構成されるので,負帰還増幅器の増幅度 A' は安定である。また信号の波形は忠実に増幅される。機械システムではワットの蒸気機関にある調速機が回転速度をフィードバックして蒸気量を調整する仕組みとして利用され,自動制御技術の始りとされている。フィードバックを人工物,生体,社会に共通するメカニズムとしてとらえる総合的な学問分野としてサイバネティクスがある。

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化学辞典 第2版 「フィードバック」の解説

フィードバック
フィードバック
feedback

出力の一部が入力側に戻って入力に加わり,出力に影響を及ぼすことで,帰還ともいう.入力と出力との比,つまり増幅率をμとし,出力のうち入力にフィードバックされる部分の比率,すなわち帰還率をβ,フィードバックのないときの増幅率を μ0 とすれば,μ0β > 0のときを正フィードバック,μ0β < 0のときを負フィードバックという.また,増幅率μは,

で示される.β > 1/μ0 のときは負性抵抗を生じて発振する.このようなフィードバックは,自動制御系や計測装置などいろいろな電子装置に取り入れられている.

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知恵蔵 「フィードバック」の解説

フィードバック

制御工学の基本技術。アウトプットの結果をインプット側に還元し、システム全体の調節を図ること。フィードバックによってアウトプット側の誤差を少しでも少なくすることができればシステムは安定するし、逆の場合は発散(不安定となりやがて壊れる)する。ロボットでフィードバック制御を可能にするためには、プロセッサー(情報処理装置)、センサー(情報入力装置)、アクチュエーター(駆動装置)が必要。この3つがうまく連携して安定稼働することにより、ロボットの統制の取れた運動を実現することができる。

(築地達郎 龍谷大学准教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「フィードバック」の意味・わかりやすい解説

フィードバック

ある動作(入力)によって生じた結果(出力)の一部または全部を,原因側に戻し,加えまたは差し引いて出力に影響を与える循環作用。電気工学では帰還ともいう。制御工学などで重要。→自動制御

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栄養・生化学辞典 「フィードバック」の解説

フィードバック

 フィードバック制御ともいう.生体のある機能が発現すると,その結果としてその機能に制御が起こることがある.このように,結果によってもたらされる当該過程の制御.たとえば,ある一連の反応の産物がその反応過程の特定の段階を阻害したり活性化したりすること.また,ある刺激によってホルモンが分泌されると,そのホルモンが刺激の伝達を抑制したりする現象もフィードバックという.

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流通用語辞典 「フィードバック」の解説

フィードバック【feedback】

元来は制御工学の用語。システムの目的を追求するために、そのアウトプット情報を使用して、インプットをコントロールする働きのことをいう。経営においては、過去の結果から問題点を把握し、逐次的修正を繰り返すことによって、適正な企業行動をとることができるようにするための働きを意味する言葉として使用されている。

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音楽用語ダス 「フィードバック」の解説

フィードバック(奏法)[feedback playing]

エレクトリック・ギターをある程度の大音量で弾くと、そのアンプから出てきた音が弾いたギターの弦を振動させる。それをまたピックアップが拾いアンプから音が出る。この繰り返しによって永遠にサステインが得られる奏法を指す。アンプとギターの角度、位置によって特定の音をフィードバックさせることもできる。

出典 (株)ヤマハミュージックメディア音楽用語ダスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のフィードバックの言及

【政治体系】より

…政治体系はこの入力を出力outputに変えて環境に送り出す。環境へ送り出された出力は次の入力にはねかえるというフィードバックfeedback機能を果たす。こうして政治体系は,環境との間で相互作用を行いつつ自己を一つのシステムとして維持していく。…

※「フィードバック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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