工場抵当法(1905公布)により認められた抵当制度で,狭義の工場抵当と工場財団抵当とがある。工場は,土地・建物などのほかに各種の機械器具等から成り立ち,これらが互いに有機的に結びつき一体的に工場経営の用に供されているのであるが,これを担保にして融資を受けようとする場合,民法の原則によれば,各土地・建物ごとあるいは各動産ごとを個別に抵当権あるいは質権の目的とすることを要することになる。しかしこの方法は繁雑であるばかりでなく,動産については原則として質権設定の方法によらざるをえず,この場合には目的物の占有を債権者に引き渡すことが必要であるため,工場経営の継続に支障をきたすことにもなり,また,個々別々に担保化されると有機的一体的なものとして存在する工場自体の価値を担保評価できないという結果が生じる。そこで工場施設の担保化を容易にし,かつ,担保評価を合理的なものとするために,1905年公布の工場抵当法によって創設されたのが狭義の工場抵当であり,工場財団抵当の制度である。工場施設の担保化の手段として創設以来一般の企業によって広く利用されている。民法の原則の例外として認められたものであるため,その対象となりうる工場の意義については営業のため物品の製造・加工,または印刷・撮影の目的に使用する場所をいうものとされ(工場抵当法1条1項),例外的に,営業のため電気・ガスの供給の目的に使用する場所および放送法にいう放送の目的に使用する場所は,工場とみなされている(同条2項)。
狭義の工場抵当は,主として小規模の工場の担保化を容易にするために認められたもので,工場に属する土地または建物を目的とする抵当権を認定した場合には,その効力がこれに付加して一体となっているもののほかに,これに備え付けられた機械器具等にも及ぶとするものである(2条)。民法370条に定める抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲を拡大しているものであるが,このため抵当権の設定の登記の際には,その効力の及ぶ機械器具等の目録の提出が必要とされている(3条)。
工場財団抵当の制度は,主として大規模な工場施設の担保化を容易にするため認められたもので,工場に属する土地・建物,機械器具,工業所有権,自動車,船舶などの全部または一部をもって組成物件とし,これらを一括して1個の財団とし,これを1個の不動産とみなして抵当権の目的とするものである(8,11条,13条ノ2,14条,〈工場抵当登記取扱手続〉10条)。工場財団を設定する場合には,工場の所有者は1個または数個の工場についてその組成物件を明らかにした工場財団目録を作成し,工場財団所有権保存の登記を受ける必要がある(9,22条)。工場財団の各個の組成物件について,個々的にその譲渡等の処分をすることは,原則として禁止され(13条2項),また組成物件の分離等の変更については抵当権者の同意を必要とする(15条,38条2項)。工場財団は1個の不動産とみなされるので,これに対する抵当権の実行手続も,原則として一般の不動産に対する抵当権の実行手続によることになる(45条以下参照)。
執筆者:清水 湛
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