左氏伝(読み)サシデン(英語表記)Zuǒ shì zhuàn

デジタル大辞泉 「左氏伝」の意味・読み・例文・類語

さしでん【左氏伝】

春秋左氏伝」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「左氏伝」の意味・読み・例文・類語

さしでん【左氏伝】

  1. 中国の十三経の一つ。魯の歴史を書いた「春秋」の解釈書。三〇巻。著者左丘明、魏の史官左氏、劉歆(りゅうきん)の偽作という三説がある。漢代に劉歆によって校訂流布された。一説に「春秋」とは無関係で独立の史書ともいう。「春秋」の記述に合わせて史実史話で解説。古注として晉の杜預(どよ)の「春秋左氏経伝集解(しっかい)」と唐の孔穎達(くえいだつ)の「春秋左伝正義」が有名。公羊(くよう)伝、穀梁伝とともに「春秋三伝」といわれる。春秋左氏伝。左氏春秋。左伝。

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改訂新版 世界大百科事典 「左氏伝」の意味・わかりやすい解説

左氏伝 (さしでん)
Zuǒ shì zhuàn

中国の古典。《公羊伝(くようでん)》《穀梁伝》とともに《春秋》の三伝(解説書)の一つとされる。《左伝》とも簡称。孔子の弟子の左丘明の作と伝えられるが疑わしい。初めて学術思想界に紹介されたのは前漢末のことである。《公羊伝》《穀梁伝》が《春秋》に託された孔子の精神を純理的に解明するのに対して,《左氏伝》は史実に即して歴史的文学的に説くのを特色とし,《春秋経》から独立した歴史物語としても,文学的に高く評価される。〈左氏伝は,艶にして富,その失や巫〉と評されるが,文章は巧みで美しく,人物や戦争の描写にすぐれた手腕を示し,斉の宰相晏嬰(あんえい),晋の文公重耳(ちようじ)の物語など,小説的なふくらみをもってみごとに描出され,後世,古典文の模範とされる。しかし,思想的には,周公が弟の管叔蔡叔を誅殺したのを王室のためと是認し,左伝学派によると,〈大義,親を滅す〉王者を絶対視する立場と説かれる。平凡社,筑摩書房より現代語による全訳が刊行されている。
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百科事典マイペディア 「左氏伝」の意味・わかりやすい解説

左氏伝【さしでん】

《春秋左氏伝》,《左伝》ともいい,《公羊伝(くようでん)》《穀梁伝》とならぶ《春秋》三伝の一つ。孔子と同時代の左丘明の著と伝えられるが疑わしい。《春秋》の解釈書。元来,史実を主に記したものであったが,前漢末劉【きん】(りゅうきん)が編集し直したといわれる。後漢から《公羊伝》に代わって春秋学主流を占める文献となった。
→関連項目国語(書名)古文

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「左氏伝」の意味・わかりやすい解説

左氏伝
さしでん

春秋左氏伝」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の左氏伝の言及

【公羊学】より

…歴史的には前漢時代と清代後半とに行われたが,特に後者をさす場合が多い。春秋時代の魯国の歴史記録である《春秋》には,その解釈として《公羊伝》《穀梁伝(こくりようでん)》《左氏伝》の3伝があるが,前漢の武帝が董仲舒(とうちゆうじよ)らの献策をいれて儒学を政治原理として用い,博士官を設けて経学の伝授を行ったとき,先秦時代の古文経書ではなくて今文(前漢時代に通用していた隷書)で書かれた経書を教科書とした。また当時の経学は経術ともよばれて政治の実際と深く結びついており,ことに《春秋公羊伝》は天下統一の理念を強く示しているために重視され,漢代の春秋学は実際は公羊学を意味していた。…

【三伝】より

…中国における五経の一つ《春秋》の三つの伝(釈義書),《公羊(くよう)伝》《穀梁(こくりよう)伝》《左氏伝》のこと。《春秋》には孔子の理念が託されているとの認識に立ち,その真義を解明しようとして,二つの方法が現れた。…

【中国文学】より

…おそらく諸子の散文の発展に刺激されて,歴史の記述に変化が起こる。《左氏伝》は《春秋》を補足する形をとり,魯の国のほか晋や楚の年代記などを利用し,前4世紀にできたと思われる。人物のいきいきとした描写,事件の展開のむだのない記述に手腕をみせる《左氏伝》は《春秋》とならんで編年体の歴史書の模範となった。…

【趙匡】より

…趙匡が啖助を訪問したのはこの一度だけだったようであるが,彼は啖助の没後,彼の子啖異躬と弟子の陸淳とから啖助の遺稿の補訂を求められ,啖助の研究の不十分な点を補っているが,趙匡の業績は要するに《春秋》三伝の批判的研究の根拠を確立したことにある。啖助の研究が三伝の統一的解釈の樹立にあったのに対して,趙匡はそれまで《公羊(くよう)伝》《穀梁伝》に対して優利な地位にあった《左氏伝》の権威を《左氏伝》・左丘明批判によって失墜させ,これによって啖助の創(はじ)めた新解釈の意義を高めたのである。その意味で彼は啖助の学灯の継承者と認められている。…

※「左氏伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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