布薩(読み)フサツ

デジタル大辞泉 「布薩」の意味・読み・例文・類語

ふさつ【布×薩】

《〈梵〉upoṣadhaの音写説戒・斎などと訳す》同一地域の僧が毎月2回、新月満月の日に集まって戒本を誦し、互いに自己反省し、罪過懺悔さんげする行事在家では六斎日などに八斎戒を守ることをいう。

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精選版 日本国語大辞典 「布薩」の意味・読み・例文・類語

ふ‐さつ【布薩】

〘名〙 (upavasatha音訳。浄住・長養などと訳す) 仏語半月ごとに同一地域の僧が集まって戒本を誦し、互いに反省しあい、罪を犯したものは懺悔する行事。日本では大乗布薩と小乗布薩を日を前後して行なった。在家で、六斎日に八斎戒を受持する場合にもいう。
続日本紀‐天平宝字元年(757)閏八月丙寅「官大寺別永置戒本師田十町、自今已後、毎布薩、恒以此物用布施」 〔大智度論‐一三〕

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改訂新版 世界大百科事典 「布薩」の意味・わかりやすい解説

布薩 (ふさつ)

仏教用語で,修行者たちが毎月2回定期的に集まり,自分の犯した罪を告白,懺悔(さんげ)し,清浄な生活を送ることを確認しあう儀式。説戒ともいい,サンスクリットのウパバサタUpavasathaの俗語形を音写したもの。毎月の満月と新月の日(15日と30日)に行われ,出家者は原則として全員出席しなければならない。全員が集合したところで,法に詳しい比丘が波羅提木叉(はらだいもくしや)(戒の条項を集めたもの)の条文をいちいち読み上げ,その制禁に牴触(ていしよく)した覚えのある者は,自ら人々の前でその罪を発露(ほつろ)懺悔するのである。〈説戒〉の訳語はこの波羅提木叉の読誦に由来する。ウパバサタと呼ばれる儀式は,その内容は異なるが,仏教以前からインドで行われていたもので,仏教はそれを換骨奪胎して採り入れたものといわれる。なお,在家の仏教信者(優婆塞(うばそく),優婆夷(うばい))が毎月8日,14日,15日,23日,29日,30日の六斎日(ろくさいにち)に八斎戒(はつさいかい)を比丘から受け,それをその日だけ守ることを布薩と称することもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「布薩」の意味・わかりやすい解説

布薩
ふさつ

サンスクリット語ポーシャダpoadhaの音訳で、長養、長浄などと意訳する。比丘(びく)たちが半月に1回、15日・30日あるいは15日・29日に一所に集会し、「波羅提木叉(はらだいもくしゃ)」(二百五十戒の条文集)を読み上げ、罪ある者は懺悔(ざんげ)し、行為を反省する。戒律が実行されていることを確認する集会のため、出欠は厳重で、無断欠席は許さない。これは部派仏教のものであるが、中国・日本の大乗仏教では、『梵網(ぼんもう)経』に基づく大乗の布薩も行われ、とくに日本では梵網の布薩が中心であった。在家では六斎日(ろくさいにち)(8・14・15・23・29・30日)に八斎戒などを守ることをいう。

[平川 彰]

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百科事典マイペディア 「布薩」の意味・わかりやすい解説

布薩【ふさつ】

同一地域に住む僧尼が,月2回(満月・新月の日)集まって,波羅提木叉(はらだいもくしゃ)を読誦し,自己反省しあい,罪を犯した者は人びとに告白懺悔(ざんげ)する行事。僧団を清浄にするために行われ,日本では大乗布薩・小乗布薩があった。また在俗の信者が月のうち6日八戒を守ることもいう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「布薩」の意味・わかりやすい解説

布薩
ふさつ

仏教行事。パーリ語 uposatha,サンスクリット語 upavasathaの音写。斎,説戒などと訳す。月に2回,満月と新月の日に同一地域の僧が集って罪を告白懺悔する集り。日本の家庭では8,14,15,23,29,30日を六斎日として,その日に八斎戒を守ることをいい,年に1度行われるのを大布薩という。

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世界大百科事典(旧版)内の布薩の言及

【斎】より

…また厄よけを目的とする〈醮(しよう)〉という祭りもあり,これは夜間に供物を並べて神々を祭り,願いごとを上奏するやり方で,道教の祭りは両者を合して〈斎醮〉とよばれることもある。 斎は清浄の意味をもつから,仏教でもウポサタuposathaまたはポシャダpoṣadha(音訳は布薩(ふさつ))の訳語として戒律を守り,身を清める意味に用いられ,六斎日(ろくさいにち),すなわち毎月8,14,15,23,29,30の6日には,在家の信者は〈八斎戒〉を守らねばならぬとされた。それは,殺さず,盗まず,婬せずなどの8種の禁忌をいうが,なかでも〈非時食(ひじしき)〉,すなわち午後の断食が中心とされ,仏教では主として午前中の食事を意味することになった。…

※「布薩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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