希ガス化合物(読み)きがすかごうぶつ(英語表記)noble gas compound

日本大百科全書(ニッポニカ) 「希ガス化合物」の意味・わかりやすい解説

希ガス化合物
きがすかごうぶつ
noble gas compound

学術用語としての正式名称は貴ガスnoble gas(の)化合物である。希ガス元素(貴ガス元素)の原子は安定な電子配置をとるので、価電子の関与する化学結合をつくりにくく、通常の意味での化合物を生成するのは困難である。希ガス元素の発見以来、化合物を合成する数多くの試みがあったが、1962年に至って初めてイギリスのバートレットNeil Bartlett(1932―2008)が成功した。強力な酸化剤である六フッ化白金によってキセノンを酸化しXe[PtF6]を得たとする彼の報告に引き続き、キセノン、クリプトンフッ化物、キセノンの酸化物、フルオリド(フッ化物イオンの配位子名)錯体などの合成が、相次いで他の研究者からも報告された。この種の化合物は、クリプトン、キセノン、ラドンのように原子番号が大きく、イオン化エネルギーが相対的に低い元素に限られており、アルゴンネオンヘリウムについては得られていない。

 歴史的には、希ガス元素の原子を含む化合物として、アルゴン、クリプトン、キセノンがキノールフェノール、あるいは水(氷)をホストとする包接化合物のゲストとなる例が知られていたが、これらの包接化合物ではホスト分子が水素結合で生成する籠(かご)状空間の中にゲストが取り込まれた構造となるので、希ガスの原子がホスト分子と直接の化学結合をもつわけではない。

[岩本振武]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「希ガス化合物」の意味・わかりやすい解説

希ガス化合物
きガスかごうぶつ
compound of rare gas

希ガス類の化合物の合成は,1962年ブリティシュコロンビア大学の N.バートレットによるキセノンのフルオロ白金酸塩の合成が最初。現在ではキセノンのフッ化物,酸化物,オキシフッ化物が多数知られている。またクリプトンやラドンの化合物もある。

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