非ウェルナー錯体に分類される錯体の一群.配位子としてカルボニル(CO)をもつ.金属イオンとCOとのσ結合は,炭素側の孤立電子対による.COは直線形に配位している.COの反結合π軌道はエネルギー的に高くないので,金属イオンのdπ電子を容易に受容することができ,逆供与による安定化が行われる.4,5,6周期の遷移元素との間に多数の錯体が形成される.単核カルボニルには[M(CO)6],[M(CO)5],[M(CO)4]の3種類が存在し,大部分が反磁性である.また,V(CO)6を除き,すべて原子価電子数が希ガスの外殻電子数と同じである.一方,奇数個のd電子をもつ金属イオンでは,電子対形成のために複核となる([Fe2(CO)9],[Co4(CO)12]など).また,配位子のカルボニルがほかの配位子と置換して混合錯体をつくる場合もある([Cr(CO)3(NH3)3],[Cr(CO)3(C6H6)]など).ニッケルカルボニルはレッペ反応の,コバルトカルボニルはオキソ合成の触媒として用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
カルボニルCOの配位している金属錯体の総称。ほとんどの遷移金属について知られている。たとえば,その代表的なものとして,第一遷移金属では表に示すようなものなどがある。これらの単一カルボニルは空気中で安定なものもあるが,一般に不安定で,発火性のものもあり,ほとんどが有毒である。他の配位子との混合錯体も多く,さらに第二,第三遷移金属では各種の錯体が知られており,多核錯体,とくに金属クラスター化合物が多い。金属カルボニルは配位子のCOを他の有機性配位子と置換しやすく,各種有機金属錯体の原料となり,またたとえばレッペ反応や,ヒドロホルミル化反応すなわちオキソ法など各種有機合成反応の触媒となる。
これらの反応では,まず金属カルボニルに不飽和分子が配位し,次いで挿入反応が起こる。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…接頭語となるときはオキソoxo‐となる。【竹内 敬人】(2)一酸化炭素COの配位子名をカルボニルというが,転じてカルボニルの配位した金属カルボニルを単にカルボニルということもある。金属カルボニル【中原 勝儼】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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