中国,東晋時代の学者。字は令升。新蔡(河南省)の人。呉王朝に仕えた家柄であったが,宰相王導の推挽により,史官として東晋初年の朝廷に出仕し,《晋紀》を著した。また《易》や《周礼》などの古典に注を付けた。しかし干宝の名が後世に記憶されるのは,《捜神記》30巻を著したことによってである。《捜神記》は,南北朝時代を通じて数多く著された〈志怪小説〉と呼ばれる一群の怪異の記録の代表作。干宝は,この書物のなかで,この世界に怪異が存在することの意味を真剣に追求しようとする。当時の玄学を弄んでいた人々とはまた違った形で,魏・晋時代の人々の精神の世界を暗示する作品である。《晋書》巻八十二に彼の伝がある。
執筆者:小南 一郎
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生没年不詳。4世紀中ごろ、中国、東晋(とうしん)の歴史家。字(あざな)は令升(れいしょう)。新蔡(しんさい)(河南省)の人。才器を認められて著作郎となり、官は散騎常侍(さんきじょうじ)まで進んだ。推薦を受けて西晋の歴史『晋紀(しんき)』20巻を編纂(へんさん)したが現存しない。また彼は生来陰陽術数を好み、怪異を語る風潮が流行するなかで、鬼神・怪異に関する説話や見聞を集めた『捜神記(そうじんき)』20巻を著した。この書は、内容も豊富で文辞も優れ、六朝(りくちょう)志怪(しかい)小説の代表作とされ、また、後世の小説に多くの素材を提供している点でも、中国小説史上画期的な著述と評価される。
[竹田 晃]
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… 〈小説〉はもともとささいな雑記の集録であった。魏・晋以後二つの方向をとり,干宝の《捜神記》と劉義慶の《世説(せせつ)新語》とがそれぞれを代表する。前者は怪異談を集め,超自然への恐れを核とする幻想の拡大へ向かい,仏教や道教の霊験記の類と親近性がある。…
※「干宝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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