平城宮跡(読み)へいじようぐうあと

日本歴史地名大系 「平城宮跡」の解説

平城宮跡
へいじようぐうあと

佐紀さき町にあり、国特別史跡。宮跡内には大黒の芝・東大宮・大り宮などの小字名が残る。平城京北辺中央部にあたり、南北約一キロ、東西約一・三キロの規模である。和銅三年に造営され、延暦三年に長岡へ遷都するまで使用され、のちに譲位した平城上皇の宮城として大同四年(八〇九)から天長元年(八二四)の間も使われた。廃都後まもなく水田化されたことが正史にみえる。明治時代(一八六八―一九一二)には「大黒の芝」とよばれていた大極殿の土壇および朝堂ちようどう院の土壇が水田の中に残っているだけとなっていた。

この地域が平城宮跡にあたることは、幕末、北浦定政によって確かめられ、明治時代になって関野貞によってさらに詳細に平城京の復原研究が行われた。宮跡は奈良山から南になだらかに下がる丘陵部の先端に位置し、北に佐紀盾列さきたてなみ古墳群があり、西は秋篠川の旧河道が走る低湿地帯となっている。かつて秋篠川沿いの低湿地には弥生時代の大規模な集落が営まれていた。その一部は平城宮の下層遺構として検出されており、竪穴住居跡とともに第四、第五様式に属する弥生式土器が多数出土している。また平城宮跡の中央部分では北から下がってくる丘陵の起伏に沿って幾筋かの谷があり、そのなかには古墳時代の遺物を出土する溝が存在していることが、発掘調査で確認されている。

平城宮は、このような丘陵地帯の高地部分を削り、低地を埋立てて造成された土地に建設された。宮は朱雀大路の北端中央の四坊分と、その東に接する半坊分の東院地区からなる。宮は基底幅三メートルの築地大垣によって囲まれ、その外側一〇メートルの所に幅三メートルの外堀(これらは同時に宮周辺を走る大路の側溝でもある)をめぐらしていた。宮の四面には各々三門ずつの宮城門があったと推測されているが、東面と北面については東院との関係上あるいは地勢上問題があり、今後の調査課題である。そのうち発掘調査で規模および位置が確認されたのは朱雀門(南面中央)玉手たまて(西面南門)佐伯さえき(西面中央)および東院南面門である。

平城宮の内部の施設は大きく分けて四つの部分から構成されている。第一は天皇およびその一族の居住空間である内裏、第二は政治・儀式の場である朝堂院、第三は内裏・朝堂院を取巻く官衙区域、第四は東へ張出した部分にある東院がそれである。これらの区画のうち、内裏と朝堂院とは平城宮の正面門である朱雀門通の中軸線に沿って建てられていず、南面東門である壬生みぶ門の軸線に従い、宮全体の東寄りに位置して造営されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「平城宮跡」の解説

へいじょうきゅうあと【平城宮跡】


奈良県奈良市佐紀町ほかにある宮殿跡。奈良山丘陵の南山麓から平野部に展開する平城京の中枢機構で、平城京域の北辺中央に位置する。ここには、天皇の住まいである内裏(だいり)や国家的な儀式や政治の場である大極殿・朝堂院(ちょうどういん)のほか、数多くの役所が立ち並び、四方には、高さ5mの築地塀がめぐらされ、東西南北にそれぞれ3門、あわせて12の門があり、南の正面中央の門が朱雀(すざく)門。1922年(大正11)に大極殿と朝堂院の跡が史跡の指定を受け、1952年(昭和27)には特別史跡になった。1954年(昭和29)に北辺の道路の拡張工事にともなう緊急調査が開始され、1959年(昭和34)から本格的な調査が進められた。その結果、奈良時代七十余年にわたる古代宮殿遺跡で、遺構の遺存状態が良好なことから、奈良時代の政治、経済、社会の動向を知ることができるとされ、幾度かの史跡指定により全域が保存された。約5万点にのぼる木簡をはじめ、土器や瓦、生活用具など多くの遺物も発見され、平城宮跡が世界に比類のない地下遺構、歴史の宝庫であることが明らかになった。1998年(平成10)春には、朱雀門と東院庭園が復元された。また、同年に「古都奈良の文化財」として、世界遺産に登録された。平城宮跡資料館には、宮内の発掘成果や整備状況などが展示されている。近畿日本鉄道奈良線ほか大和西大寺駅から徒歩約10分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

事典 日本の地域遺産 「平城宮跡」の解説

平城宮跡

(奈良県奈良市二条大路南4-6-1)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

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