平成景気(読み)へいせいけいき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「平成景気」の意味・わかりやすい解説

平成景気
へいせいけいき

拡張期間が、1986年(昭和61)12月から1991年(平成3)2月までの51か月間続いた、「いざなぎ景気」に匹敵する大型景気。この間、経済が泡(バブル)のように実体以上に膨らんだことから、バブル景気ともいう。バブル状態になった直接のきっかけは、1985年9月のプラザ合意後の円高局面で日本経済が超金融緩和時代に入ったこととされる。過剰流動性は土地、建物の不動産と株式への投資に集中、その結果、不動産の担保価値が上昇し、借り増しした資金をふたたび投資に振り向けるという形でバブルが膨らんだ。しかし公定歩合の引上げや不動産融資の総量規制、また1990年8月のイラクのクウェート侵攻で原油価格が暴騰したことなどから、一転バブルは崩壊した。その後の金融システム不安、「失われた十年」とよばれる長期の停滞状態など、日本経済に大きな後遺症を残すこととなった。なお、新世紀に入り景気は2002年1月を谷として回復し始め、2006年11月には景気拡張期間が「いざなぎ景気」の57か月を超えて戦後最長を記録した。

[一杉哲也・羽田 亨]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平成景気」の意味・わかりやすい解説

平成景気
へいせいけいき

1986年 11月を谷とする第 11循環の景気拡大局面。経済のファンダメンタルズに基づかない景気上昇であったことから,バブル景気ともいわれる。 86年 12月から 91年4月までの 53ヵ月が平成景気にあたり,「いざなぎ景気」に次いで戦後第2位を誇る。平成景気となる前の日本経済は,85年9月のプラザ合意を受けた円高が急速に進展し,円高不況といわれる状況であった。しかし輸入原材料安,物価の安定といった円高メリットが波及し,実質所得の増加につながったこと,金融緩和が投資マインドを刺激したこと,さらに「緊急経済対策」による景気刺激策がとられたことで,急激な回復をみせ,景気拡大が続いた。平成景気の特徴として第1に,いざなぎ景気に次ぐ期間の長さがあげられる。第2に,7年をこえる景気拡大が続き,1次産品価格も安定した世界経済の好況を背景にしていたこと。第3に,内需の力強い拡大と外需の減少がある。内需の内訳をみると,初めは公共投資と住宅投資であり,景気拡大が軌道に乗ってからは個人消費と民間設備投資の拡大がみられた。個人消費では高級車ブーム,海外旅行ブームなどにみられるブランド品指向の高まり,また企業においては生産能力の拡大や省力化のための投資に加え,情報化関連投資,研究開発投資などの独立投資が大幅に増加したことが大きな特徴といえる。第4に,雇用情勢の改善と労働力需給の引締りがある。失業率の低下幅は石油危機以降最大であり,人手不足感が広がりをみせ,省力化投資の促進要因になった。第5に,物価と賃金が落ち着いていたことがある。物価の安定には,輸入の安全弁効果が働いており,景気が加熱するのを防いでいた。第6に,経常収支の黒字幅が縮小していることがあった。しかし,90年2月の株式相場急落以降この景気にもかげりがみえ,91年日銀による金融引締策によって突然バブルがはじけるように不況状況に陥った。

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