給与所得から源泉徴収された所得税の過不足を年末に給与等から精算すること。所得税制度においては、給与所得は源泉徴収の対象とされており、給与等の支払者が、その支払いのたびごとに、その支払額に応じた税額を徴収し、国に納付することになっている。給与所得の扶養控除等申請書を提出した居住者で、その年中に支払うべきことが確定した給与等が一定の金額(2009年度は年額2000万円)以下の者については、その年の最後の給与等の支払いの際に、その年の給与等の総額に対する正式の所得税額とそれまでの源泉徴収税額を比較し、過不足を清算することとされているが、この調整を年末調整とよぶ。年内に扶養控除等が変わった場合は所得税額も変わり、最後の給与等の支払い時に確定した正式の所得税額と源泉徴収税額が異なるため、年末調整の対象となる。
年末調整を行った給与所得者は、他の所得が一定額以下である場合には確定申告をする必要がないから、大部分の給与所得者は源泉徴収のみで事がすむことになる。しかし、給与等以外に一定額以上の所得がある場合には、給与所得も総合所得税の対象となるから、確定申告をしなければならない。また、ほかに所得のない場合でも、雑損控除や医療費控除などに基づいて源泉徴収による所得税の還付を求めるためには、確定申告をすることが必要である。
源泉徴収制度は、申告制度であろうと賦課課税制度であろうと、基本的にはすべての主要国にあるが、年末調整制度によって課税当局の手を経ずに、源泉徴収義務者すなわち給与等の支払者レベルにおいて課税関係が完結する年末調整制度は、日本独自のものである。ほかの国には還付申告が多く、個人が自己の責任において確定申告等により年税額を確定させる方式をとっている。
[林 正寿]
源泉徴収を受けている給与所得者が扶養控除等申告書,保険料控除申告書等を給与支払者に提出することによって,各種の所得控除が適用され,正当な税額が算出される結果,給与所得者の毎月の源泉徴収税額の暦年合計額との間に過不足額が生ずることがあるが,これを調整,精算する手続(所得税法190~193条)を年末調整という。年末調整を受ける給与所得者は,現行制度では,年間給与額2000万円以下の者である。年末調整は,確定申告の手続を簡略化するものであるから,年末調整済みの給与所得者は,原則として確定申告をする必要はないが,その給与所得者が2ヵ所以上から給与の支払を受けていたり,給与以外に一定額以上の所得を有する場合とか,雑損控除,医療費控除,寄付金控除等の所得控除を受けようとする場合には,あらためて確定申告をしなければならない。なお,年末調整により正当税額に比べ過不足額が生じた場合,その超過額はその暦年最後の給与等の支払時に,徴収すべき所得税に充当し,充当しきれない超過額はこれをその暦年最後の給与等の支払時に還付する(191条)。逆に不足額が生じた場合は,その暦年最後の給与支払時に徴収し,なお不足するときは順次その翌年の給与支払のときに徴収し,その徴収の月の翌月10日までに納付することになっている(192条)。源泉徴収制度は,本来,給与所得者の税額確定を簡易にし迅速化するメリットがあるにもかかわらず,年末調整の件数が増加するとその利点が失われることに注意する必要がある。
執筆者:村井 正
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