山口県南西端、下関(しものせき)市にある島。旧彦島町。関門海峡の西口に位置し、本州側には小瀬戸、北九州側には大瀬戸の海峡が通じ、交通上の要地を占める。高度100メートル前後の丘陵状の島で、面積10.60平方キロメートル。下関市街地とは関彦(かんげん)橋、彦島大橋などで結ばれている。また、JR山陽本線も本島を通過、関門鉄道トンネルで門司(もじ)に至る。『日本書紀』に「引島(ひくしま)」とみえ、平安末期には源平合戦の舞台となった。明治以降、化学、金属、造船などの諸工業が発達し、さらに下関漁港周辺に水産関連産業が立地し、下関工業の核心地区を形成している。早くから近郊農業が盛んで、第二次世界大戦前知られた温室メロンは現在では花卉(かき)栽培にかわった。南風泊(はえどまり)漁港には下関を代表する味覚フグの市場がある。サイ上り神事で有名な彦島八幡宮(はちまんぐう)の境内には縄文時代前期・中期の宮ノ原遺跡があり、老(おい)ノ山(やま)公園は関門港外、響灘(ひびきなだ)の展望に優れる。人口3万3100(2000)。
[三浦 肇]
山口県下関市の南西端,関門海峡の西口を扼する島。面積9.82km2,産業・交通上の要地を占め,本土と連続した市街地を形成する。《日本書紀》仲哀紀に〈引島〉とみえ,和歌,紀行などに〈ひくしま〉と記される。源平合戦には平家方の根拠地となった。伊予河野氏の一族,また平家の末裔によって開発されたという伝承がある。幕末には攘夷戦に備えて各所に砲台が築かれた。明治以降,北九州工業化の影響で工業の島として発展,関門海峡の小瀬戸を締め切った埋立地との間に建設された下関漁港に沿って,鉄工,造船,水産加工の諸工場が集まる。早くから園芸農業が盛んで,とくに西山は第2次大戦前から温室メロンの特産地として知られ,現在はカンランや温室の花卉栽培に特色がある。関門トンネル(鉄道)の入口が江ノ浦にある。なお,島の東端弟子待(でしまつ)は,東にある巌流島での決闘のとき,佐々木小次郎の弟子が待機していたところという伝えがある。
執筆者:三浦 肇
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