日本大百科全書(ニッポニカ) 「後年度負担」の意味・わかりやすい解説
後年度負担
こうねんどふたん
行政が物品調達などの支出を複数年にわたってする場合、その支出のうち次年度以降に予算計上する額、あるいは次年度以降に分割して支払う行為。いわば複数年度にまたがる「行政の分割払い」である。自衛隊が購入する艦船、航空機、戦車などの武器や、地方公共団体が発注する公共工事などでは、調達額が巨額であるため、発注から契約、納入・完成まで2~5年かかることがある。この場合、契約した初年度は少額の前金相当額だけを支払い、大部分は次年度以降に支払う後年度負担として計上することが多い。予算上は、年度内に契約し実際の支出は翌年度以降でよいという国庫債務負担行為や、経費の総額・年割額をあらかじめ一括して議決を得る継続費の制度に基づいて計上する。次年度以降に具体的に計上する支払額を「歳出化経費」という。巨額の支出を数年に分割して支払うことで、支出額をならして単年度の負担を軽くする効果がある。
一方で後年度負担は、予算はその年の歳入と歳出をみながら決めるという「単年度主義」の原則に反するほか、初年度の負担は見かけ上少なくなるものの、実際の負担総額は大きく、負担の先送りにほかならないといった批判がある。また後年度負担が大きいと、各年度の歳出が硬直化し、柔軟で機動的な予算編成ができないほか、行政改革や経費節減がしにくいという問題点もある。なお広義には、国債や地方債の発行などの当面債券を発行して財源をまかない、実際には次世代に負担を先送りする行為を総称して、後年度負担とよぶこともある。
[矢野 武 2015年3月19日]