徴用
ちょうよう
第二次世界大戦下の国家総動員体制のもとで、労働力を軍需会社へ強制的に動員したことをいい、これの対象者を徴用工といった。1938年(昭和13)の国家総動員法は、戦時の必要に即して国民だれでもを業務に従事させることができると定め、翌1939年の国民徴用令はこれを具体化した。政府は、軍需会社に対し、徴用工の使用、解雇、従業、退職、給与その他に関して必要な命令を出すことができるとされ、また、労務管理についての指導監督は、厚生省の労務管理官から軍需省の管理官に統合された。徴用工は、実際には勤労者からなり、小売商人をはじめ中小商工業の従業員や未経験工がその多くを占めた。実質賃金は、労働の対価としての賃金の否定されたもとで1938年以降毎年低下した。労働者の移動は禁止され、労働強化が徴用の名において公然と行われた。このため、高率の欠勤をはじめ、職場における怠業、証明書の虚偽による徴用の回避などの自然発生的な反抗が少なくなかった。
[三富紀敬]
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ちょう‐よう【徴用】
〘名〙
① 物品を強制的にとりたてて使用すること。徴発して用いること。
※徴発令(明治一五年)(1882)三五条「物件と操行者とを各個に分別して徴用したるときは」
② 戦時などに際し、国の公権力で国民を強制的に動員し、
一定の業務に従事させること。
※斜陽(1947)〈太宰治〉二「徴用されて地下足袋をはき、ヨイトマケをやらされた時の事」
③ 召し出して、官職につけること。登用。〔文明本節用集(室町中)〕 〔史記‐儒林伝〕
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ちょう‐よう【徴用】
[名](スル)戦時などの非常時に、国家が国民を強制的に動員して、一定の仕事に就かせること。また、物品を強制的に取り立てること。「兵器工場に徴用される」「車両を徴用する」
[類語]動員・総動員・徴集・徴兵
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徴用【ちょうよう】
国家権力により一定の業務(兵役を除く)に従事させること。日本では国家総動員法に基づいて国民徴用令,船員徴用令などが発布された。
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ちょうよう【徴用】
日中戦争の全面化以降にとられた労働力の強制動員政策。徴用制は国家総動員法のもと,国民職業能力申告令による国民登録制の整備を背景にして,1939年7月に国民徴用令が公布されて開始した。当初は申告を義務づけられた職種の技能,技術者を対象とし,職業紹介,募集などで重要産業に人員を確保できない場合は,総動員業務を行う官庁の請求により,必要に応じて徴用がなされることになっていた。しかし戦争の拡大による労働力不足の激化のため,徴用の対象は次々と拡大した。
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