心付く(読み)こころつく

精選版 日本国語大辞典 「心付く」の意味・読み・例文・類語

こころ【心】 付(つ)

[一] (「付く」が自動詞四段活用の場合)
① ある考えを持つようになる。心が起こる。
古今(905‐914)恋四・七一八「わすれなんと思ふ心のつくからにありしよりけにまづぞこひしき〈よみ人しらず〉」
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「『いかでこれやしなはん』と思ふ心つきて思へど」
② ある対象に、愛情執着、強い関心などが生じる。心にかかる。執心する。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「実忠といふ、宰相にて、このあて宮に御こころつき給て、いかできこえんとおぼせど」
③ すぐれた分別才覚などをもつようになる。また、成長して一人前思慮分別をもつようになる。
※伊勢物語(10C前)五八「むかし、心つきて色好みなるをとこ、長岡といふ所に家つくりて居りけり」
御伽草子・物くさ太郎(室町末)「男は妻(め)を具して心つく、女房は夫にそひて心つくなり」
④ ある心がその人にそなわる。考え方や性格をもつ。
源氏(1001‐14頃)東屋「事好みしたるほどよりは、あやしうあららかにゐなかびたる心ぞつきたりける」
⑤ 産気づく。
義経記(室町中か)六「静、思ひの外に堅牢地神も憐み給ひけるにや、痛む事もなく、そのこころつくと聞きて、藤次の妻女、禅師諸共に扱ひけり」
[二] (「付く」が他動詞下二段活用の場合) ⇒こころ(心)を付く

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「心付く」の意味・読み・例文・類語

こころ・く

(「付く」が四段活用の場合)
愛情や関心が生じる。執心する。
「御娘たちの住まひ給ふらむ御ありさま思ひやりつつ、―・く人もあるべし」〈椎本
物心がつく。分別がつく。
「―・きなば、僧になして」〈太平記・九〉
気がつく。
「ある人々は―・きたるもあるべし」〈堤・虫めづる姫君
(「付く」が下二段活用の場合)
愛情や関心を持つ。思いを寄せる。
「うつせみの常なき見れば世の中に―・けずて思ふ日そ多き」〈・四一六二〉
気をつける。注意する。
「若き人に見ならはせて、―・けんためなり」〈徒然・一八四〉

こころ‐づ・く【心付く】

[動カ五(四)]
気がつく。考えが回る。
「今更のように―・いて見ると」〈藤村旧主人
失っていた意識を取り返す。正気づく。
「はっと―・いて我に返れば」〈露伴・椀久物語〉
[動カ下二]こころづける」の文語形

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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