心霊学(読み)しんれいがく

精選版 日本国語大辞典 「心霊学」の意味・読み・例文・類語

しんれい‐がく【心霊学】

  1. 〘 名詞 〙 肉体を離れて死後などにも存在すると信じられている霊魂現象などについて研究する学問
    1. [初出の実例]「すると、心霊学といふやうなものですか」(出典:第一の世界(1921)〈小山内薫〉一幕)

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改訂新版 世界大百科事典 「心霊学」の意味・わかりやすい解説

心霊学 (しんれいがく)

現在の科学知識からは予測も説明も不能な超常的現象を心霊現象と呼ぶが,そうした現象を死後生存の方面から解釈,研究しようとする立場。この種の現象は古来各地で知られている。とくにヨーロッパ諸国では,いわゆる心霊主義spiritualismの伝統があり,スウェーデンボリの著作などを通じてなじみが深かったが,19世紀中葉までは系統的研究の対象とはならなかった。1847年デービスAndrew Jackson Davisというアメリカの無学な一青年が催眠トランス状態で神秘的大著を口述するという事件があり,翌48年にはニューヨーク州寒村で〈ハイズビル事件〉が起こる。これらの事件が近代心霊主義勃興の端緒となり,それ以後急速に,死後生存を信ずる運動が全米,次いでヨーロッパ各地に広まった。近代心霊主義とは,〈霊界にある者と,霊媒術を通じて行う通信により明らかにされる事実に基づく,死後生存の科学であり哲学であり宗教〉であって,さまざまな宗教に共通する古来の霊的世界観を出発点とするものではない。ハイズビル事件とは,この村の一家の2人の娘(フォックス姉妹)が,その家で以前殺害された人物の霊と,叩音(こうおん)を通じて交信することに成功したといわれる,ポルターガイスト現象類似の出来事である。これが契機となり,全米各地に多数の霊媒が輩出し,そうした霊媒を中心に交(降)霊会が盛んに開催された。交霊会で観察報告される現象としては,物体浮揚エクトプラズムによる物質化現象,その場になかったものが突然出現する〈物品引寄せ〉等の物理的現象と,霊媒がトランス状態で,知らないはずの言葉を話す〈異言xenoglossis〉や,透視,自動筆記・描画等の心理的現象とがある。こうした現象はやがて,当時の一部の指導的科学者の関心をかきたて,1882年にはその科学的研究を目的とした心霊研究協会がイギリスに設立され,本格的な研究が開始されるに至った。その後まもなく心霊主義と袂を分かった心霊研究psychical researchは,やはり霊媒を対象に研究を続けたが,死後生存の証明は結局できないまま,その後確立された超心理学的方法にしだいに道を譲り,現在に至っている。

 日本でも古くから心霊現象の存在が報告されてきたが,江戸末期の国学者平田篤胤らの客観的な記述による調査研究(例えば《仙境異聞》《勝五郎再生記聞》)はあったものの,科学的な研究が開始されたのは明治期以降である。1884年,東京帝国大学の井上円了は,文明開化の風潮の中で,妖怪学の研究に着手,86年には同大学に〈不思議研究会〉を開設した。迷信の打破を目的とし,心霊現象自体の研究をめざすものではなかったが,科学的な調査を行ったという点で評価に値する。1910年,同じく東京帝国大学の心理学助教授福来(ふくらい)友吉は,催眠の研究から透視研究へと入り,その経過の中で〈念写〉という現象を欧米の心霊研究とは独立に発見している。念写研究で福来のとった研究態度は,欧米の心霊研究のそれと比較して遜色のないほど科学的に厳密なものであったが,反対論者を納得させるには至らなかった。福来はその後,仏教的心霊主義ともいうべき道に入り,日本での科学的な心霊現象の研究は,第2次大戦後アメリカの超心理学が紹介され,研究が開始されるまで40年近い空白を残した。
超心理学 →霊魂
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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