診療に従事する医師は、診察や治療を求められた場合には、正当な理由なく拒否してはならないとする義務。医師法第19条に規定されている。
[前田幸宏 2019年11月20日]
厚生省医務局長通知によると、「何が正当な事由であるかは、それぞれの具体的な場合において社会通念上健全と認められる道徳的な判断によるべきである」とされている。正当な事由のある場合とは、「医師の不在または病気等により事実上診療が不可能な場合に限られる」とされている。休日夜間診療診療所や当番医制などの体制が敷かれている場合には、当番外であっても、「症状が重篤である等直ちに必要な応急の措置を施さねば患者の生命、身体に重大な影響が及ぶおそれがある場合においては、医師は診療に応ずる義務がある」とされている。応召義務違反の罰則は規定されていない。しかし、医師法に基づく行政処分は可能と考えられている。医師法第7条の「医師としての品位を損するような行為のあったとき」にあたるため、「義務違反を反覆するが如き場合において同条の規定により医師免許の取消又は停止を命ずる場合もありうる」とされている。民事責任については、応召義務が患者保護の側面をもつ規定と考えられることを踏まえ、診療拒否によって患者に損害が生じた場合に、医師に過失があったと推定し、民事上の賠償責任を認めるという趣旨の判決がみられる。
[前田幸宏 2019年11月20日]
医師法に応召義務が規定された当時(1948)と異なり、現在の医療提供体制は、医療計画のもと、医療施設間の機能の分担および業務の連携が進められており、医師の専門分化も進んでいる。厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」によると、「応召義務については、医師が国に対して負担する公法上の義務であり、医師個人の民刑事法上の責任や医療機関と医師の労働契約等に法的に直接的な影響を及ぼすものではなく、医療機関としては労働基準法等の関係法令を遵守した上で医師等が適切に業務遂行できるよう必要な体制・環境整備を行う必要がある」とされている。「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究」(2018年度厚生労働科学研究)では、応召の義務の整理だけでなく、医療機関・医師が診療しないことが正当化される考え方などについて整理されている。厚生労働省は2019年(令和1)7月の社会保障審議会医療部会で、この報告書を受けた今後の対応として、現代における医療提供体制の在り方や医師の勤務環境等の観点も考慮しつつ、医師法上の応召義務の考え方等について解釈通知を発出する方針を示した。2019年10月末時点では通知はまだ発出されておらず、今後に期待される。
[前田幸宏 2019年11月20日]
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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