急潮(読み)キュウチョウ

デジタル大辞泉 「急潮」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐ちょう〔キフテウ〕【急潮】

流れの速い潮流
太平洋岸で、外洋水沿岸に押し寄せる現象冬季沖合低気圧通過するときに起こることが多く、相模湾駿河湾ではブリ大漁をもたらす。

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精選版 日本国語大辞典 「急潮」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐ちょうキフテウ【急潮】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 流れの速いしお。急な潮流。
    1. [初出の実例]「世界の大勢は急潮の如く馳せて居る此明治の時代に当って」(出典:黒潮(1902‐05)〈徳富蘆花〉一)
  3. 駿河湾や相模湾などの太平洋沿岸で、外洋水が湾内に急に流入すること。冬から春にかけて、ほぼ月一回の割合で生じ、ブリなどの豊漁をもたらす。大急潮
  4. ( 比喩的に ) 時勢の速い流れ。
    1. [初出の実例]「明治維新の改革の急潮が四年五年と年を経るに随うて漸く緩慢になったのは」(出典:明治叛臣伝(1909)〈田岡嶺雲〉総敍)

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改訂新版 世界大百科事典 「急潮」の意味・わかりやすい解説

急潮 (きゅうちょう)

一般的には流れの早い潮,急な潮流を指す。海洋学でいう急潮とは,日本の太平洋沿岸,特に相模湾や駿河湾などで,外洋水が湾内に急に流入する現象であり,単に流速の大小を言っているのではない。この現象は大急潮とも呼ばれる。急潮は冬から春にかけてほぼ1ヵ月に1度の割合で起こることが多い。急潮時の沿岸流速は毎秒20cmから50cmに達する。急潮に伴い水温が1℃から3℃くらい急に上昇するのが普通である。このような急潮の原因はよくわかっていないが,低気圧や前線の通過などの気象状況や,沖合の海流の流速流向と密接な関係があると考えられている。急潮時にはブリなどの魚が外洋水とともに湾内に入り込むので,湾内の定置網で捕獲されるブリの量が急に増大するなど豊漁の原因でもあるが,一方強流で網が流されたり破損したりする損害を与える。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「急潮」の意味・わかりやすい解説

急潮
きゅうちょう

沿岸域で突然流れが速くなり,沿岸に設置された定置網や養殖網に被害を与える現象。相模湾・駿河湾・鹿島灘天草灘などで古くから知られている。これは黒潮親潮の流向変化による影響,低気圧通過による吹送流の発達,潮汐流の影響などが原因として考えられてきた。相模湾では黒潮の接近,低気圧の通過に伴い発生した境界波などが原因で起こることが多く,駿河湾では潮汐からエネルギーを受けて発生する内部潮汐によることが明らかにされている。

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百科事典マイペディア 「急潮」の意味・わかりやすい解説

急潮【きゅうちょう】

大急潮とも。駿河湾,相模湾などの太平洋沿岸の湾で,冬〜春に外洋水が急に湾内に流入する現象。ブリの群などが一緒に湾内に入り大漁となることもある。原因としては,大気の不連続線の通過や低気圧による強い南風などがあげられる。
→関連項目黒潮

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