茨城県大洗岬から千葉県犬吠埼に続く弧状海岸東方の太平洋海域。遠浅の海岸で陸棚面の傾斜はゆるやかであり,天然の良港に欠けるが,1960年代に掘込み式人工港としての鹿島港建設により,鹿島臨海工業地域が造成され,新しい局面を迎えた。黒潮と親潮の潮境となる好漁場をなし,サンマ,イワシ漁業がさかんで,江戸時代には沿岸各地で地引網が発達した。日本~北アメリカ太平洋岸間の大圏航路の通過水域にあたり,航行船舶が多いが,江戸時代には東廻海運の難所として知られた。そのため那珂湊-涸(ひ)沼-北浦-利根川を介して江戸に達する内陸水路の利用(一部に陸路並存)が行われ,水戸藩による紅葉(もみじ)運河(勘十郎堀)の開削もなされたが,未完成に終わっている。沿岸は鹿島浦と呼ばれる砂浜海岸,陸棚は日本海溝に接し,地震源としても有名。海溝にある鹿島海山はプレートの移動によって赤道付近からここまで達したと考えられている。
執筆者:中川 浩一
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茨城県海岸中部の大洗岬(おおあらいみさき)から南方、千葉県犬吠埼(いぬぼうさき)までの太平洋沿岸海域をいう。海底地形は海岸線に並行して広大な大陸棚が続き、大陸棚斜面も緩やかである。海流は夏は黒潮(暖流)、冬は親潮(寒流)が流れる寒暖両流の接触・交替する所で、これらのため波浪高く帆船時代は航行困難な難所であった。しかし、これが霞ヶ浦(かすみがうら)や利根(とね)川を利用する常陸(ひたち)の内陸水運を発達させた原因であった。寒暖両流の存在は好漁場をつくり、イワシ、サンマ、サバなどの漁業が盛んで、沿岸の久慈(くじ)、大洗、波崎(はさき)、千葉県銚子(ちょうし)などの漁港を発展させた。近年は鹿島臨海工業地域と鹿島港の発達で大型タンカーの往来も多くなった。
[櫻井明俊]
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